面接官をしていると、「この学生は悪くない。むしろ光るものがある」と感じながらも、不合格にせざるを得ない場面が少なくありません。
本音をいえば、「あと一歩なのに…」と心の中でつぶやきつつ、合否の判定を出しています。
しかし、その理由を本人に直接伝えることはできません。今日は、その“惜しい”瞬間について赤裸々に語りたいと思います。
1. 志望理由が表面的で「もったいない」
面接で一番多いのがこれです。
学生さんの表情や姿勢から「この業界に興味があるんだろうな」と感じるのに、言葉にすると「成長できそうだから」「将来性があるから」という表現で止まってしまう。
もちろん間違いではありません。
でも、それだけでは他の学生との差がつかないのです。
「アルバイトで使ったシステムに助けられた経験があり、仕組みを知りたいと勉強を始めた」
「家族の仕事を見ていて、この分野の社会的意義を感じた」
こうした“自分だけのエピソード”が一言加わるだけで、志望理由はグッと説得力を増します。
「本当は原体験があるのに、言葉にできていない」──このケースは面接官として本当に惜しいと思う瞬間です。
2. 会話のキャッチボールが弱い
マナーや受け答えは丁寧で、笑顔もある。けれども、こちらの質問に対して「準備してきた文章」を読み上げるように答えてしまう。
これも惜しいパターンです。
面接は“質疑応答”である以上、相手の質問に応じて答えを組み立てる力が必要です。
準備は大事ですが、準備した言葉にしがみついてしまうと、会話が一方通行になります。
面接官「学生時代に一番頑張ったことは?」
学生「はい、ゼミでの研究です。〇〇をテーマにして〜…」
ここで5分間ノンストップで語られてしまうと、正直困ります。
私たちが聞きたいのは「要点」と「そこから見える人柄」。
話を簡潔にまとめ、こちらが掘り下げやすい余白を残す。
それができていないと「惜しい」と感じてしまうのです。
3. “弱み”を語らない
もうひとつ意外に多いのが、「弱みを聞かれて、答えられない」パターン。
「完璧な学生でいよう」と思うのは分かりますが、実際にはどんな人にも弱みがあります。
たとえば、
「細かい作業をしていると、つい時間を忘れて全体の進行を遅らせてしまう」
「初対面では緊張しやすいですが、慣れると人間関係を築けます」
といった素直な答えで十分。
むしろ弱みを言えないほうが「自己認識が浅いのでは?」と受け取られやすいのです。
面接官としては「強みも弱みも分かっている学生の方が安心して採用できる」と考えています。だから、弱みをうまく語れない学生に出会うと、「惜しい」と思ってしまうのです。
4. 情熱はあるのに行動が伴っていない
「御社に強く興味があります!」と言い切る学生は多いのですが、よくよく質問すると、
・業界のニュースをほとんど読んでいない
・参考書や資格の勉強は「これからやろうと思っています」
・社員や先輩に話を聞いた経験がない
──こんな状態のことがあります。
熱意を疑うわけではありません。きっと本気なのでしょう。
でも「準備の痕跡」が何もないと、面接官は「もし入社しても言葉だけにならないか」と不安に思ってしまいます。
逆に、小さな一歩でも行動が見える学生は強いです。
たとえば「説明会で社員の方に質問しました」「関連書籍を2冊読みました」など。
規模の大きさよりも、行動した事実が熱意の証拠になるのです。
面接官の本音
ここまで挙げたように、落ちる理由は必ずしも「能力が足りない」からではありません。
むしろ「伝え方が整理できていない」「行動と結びついていない」といった“惜しい”要素が大半です。
学生の皆さんに伝えたいのは、「あなたはダメだから落ちたわけじゃない」ということ。
面接官としては、「あと少し準備していたら」「言葉を工夫していたら」通過できたのに…と感じることが本当に多いのです。
まとめ
面接は一発勝負の場です。
だからこそ、**「惜しい」で終わらせない工夫」**が大切です。
- 志望理由は必ず原体験につなげる
- 会話はキャッチボールを意識する
- 強みだけでなく弱みも素直に語る
- 熱意は“行動の痕跡”で示す
この4点を意識するだけで、“惜しい学生”から“一歩抜け出す学生”に変わることができます。
そして私たち面接官も、胸の中で「残念…」と思わずに、「ぜひ一緒に働きたい」と心から言えるようになるのです。