
IT業界を志望する就活生の多くが、最初にぶつかる壁があります。

それが「SIerとSESって、何が違うの?」という疑問です。
企業説明会に行けば必ず聞くこの2つのワード。なんとなくわかったふりをしている学生が非常に多いのですが、実はこの違いを正確に理解しているかどうかが、IT業界での企業選びの質を大きく左右します。

さらにインターネットには「SESはブラック」「SIerは終わっている」「IT業界はやめとけ」といった過激な情報が溢れていて、余計に混乱してしまいます。
しかし実際に採用現場で年間300名以上の学生と面接をしている立場から言わせてもらうと、SIerもSESも、会社次第・人次第でいくらでも可能性が広がる世界です。
この記事では、IT企業の人事として面接を担当している筆者が、SIerとSESの違いをゼロから丁寧に解説します。「自分はどっちが向いているのか」「どんな会社を選べばいいのか」まで、具体的にお伝えしていきます。
- この記事でわかること
- IT業界の「多重下請け構造」を理解しないと何も始まらない
- SIerとは何か?——「システムを作る会社」の正体
- SESとは何か?——「エンジニアを提供する」ビジネスモデル
- SIerとSESの違い——一番わかりやすい整理方法
- 就活生が陥りがちな勘違い——「SES=ブラック」は本当か
- IT業界の主な職種——「エンジニア」は一種類じゃない
- SIerで働くメリット——大規模・安定・上流への道
- SIerで働くデメリット——技術から遠ざかるリスクと責任の重さ
- SESで働くメリット——技術の幅・スピード・柔軟性
- SESで働くデメリット——環境の不安定さとキャリア設計の難しさ
- SIerは本当に「楽」なのか?——人事が見る現実
- IT企業の見極め方——人事が教える「本当に良い会社」の探し方
- IT業界に向いている人・向いていない人
- 未経験でIT業界に入るなら——SESからのスタートは正解か?
- IT企業の面接で聞かれること——人事が見ているポイント
- まとめ——SIerとSESの違いより「会社の中身」を見よ
この記事でわかること
- IT業界の多重下請け構造とは何か
- SIerとSESの本質的な違い
- IT業界の主な職種と仕事内容
- SIer・SESそれぞれのリアルなメリット・デメリット
- 就活生がよくやってしまう勘違い
- 人事が見ているポイントと面接対策
IT業界の「多重下請け構造」を理解しないと何も始まらない
SIerとSESを理解するには、まずIT業界の構造を知ることが不可欠です。IT業界は、他の業界とは少し異なる独特のビジネス構造を持っています。それが「多重下請け構造」と呼ばれるものです。
多重下請け構造とは何か

多重下請け構造、聞いたことあるかな?
例えば、大手銀行が新しいシステムを開発するとします。銀行自身がエンジニアを何百人も社内に抱えているわけではありません。そのため、まずIT企業に開発を発注します。依頼を受けたIT企業も、自社だけでは手が足りない部分を別の会社に発注します。その会社もさらに別の会社に一部の仕事を依頼する、という流れが生まれます。
構造を図にするとこうなります。
発注企業(銀行・流通・官公庁など)
↓
大手SIer(元請け)
↓
中堅IT企業(二次請け)
↓
開発会社・SES企業(三次請け〜)
このように複数の企業が連携してシステムを作る構造のことを「多重下請け構造」と呼びます。
なぜこのような構造になるのか
多重下請け構造が生まれる理由は大きく3つあります。
① IT開発には大人数が必要
大規模なITシステムの開発は、1つの会社だけで賄えるものではありません。
たとえば銀行の基幹系システムの開発ともなると、数百〜数千人規模のプロジェクトになることも珍しくありません。1社でそれだけの技術者を抱えることは現実的ではないため、複数の企業が協力してチームを組む体制になっています。
② 専門分野がそれぞれ異なる
IT開発にはさまざまな専門分野があります。
- アプリケーション開発
- ネットワーク構築
- クラウド基盤
- セキュリティ
- データベース設計
1社がこれらすべてを高いレベルでこなすのは難しいため、それぞれの専門企業が分担して担当する形になっています。
③ プロジェクト型ビジネスの性質
IT開発は「始まり」と「終わり」があるプロジェクト型の仕事です。
「銀行システム開発(3年プロジェクト)」であれば、3年が経過するとそのプロジェクトは終わります。終わった後も全員を雇用し続ける必要はありません。そのため、「必要なときに必要な分だけ人材を確保できる仕組み」として、SES(後述)というビジネスモデルが生まれました。
多重下請け構造は悪いのか?
「IT業界の多重下請けは問題だ」という声を聞いたことがある人もいると思います。確かに問題点がないわけではありません。中間マージンが発生することで現場エンジニアへの報酬が低くなったり、スケジュールがタイトになりやすい面もあります。
ただし一方で、
- 大規模なシステム開発が現実的に可能になる
- 各社の専門技術を集約できる
- エンジニア不足を業界全体でカバーできる
という大きなメリットもあります。構造そのものに問題があるのではなく、その運用の仕方と、所属する会社の姿勢によって大きく変わるというのが実態です。
SIerとは何か?——「システムを作る会社」の正体
SIerの定義
SIerとはSystem Integrator(システムインテグレーター)の略称です。一言で言えば「企業のITシステムを受注して、設計から開発・導入・運用まで一貫して担う会社」です。
私たちの日常生活を支えているシステムの多くは、SIerが作っています。
- 銀行のATMや振込システム
- 航空会社の予約・搭乗管理システム
- Amazonや楽天のようなECプラットフォーム
- コンビニのPOSレジシステム
- 自治体の住民票管理システム
これらはすべて、SIerがゼロから作り上げたITシステムです。つまりSIerは、社会インフラそのものを作る仕事と言っても過言ではありません。
SIerの仕事の流れ
SIerの仕事は、大きく6つの工程に分かれています。
① 要件定義——「何を作るか」を決める
最初の工程が要件定義です。顧客(銀行や官公庁など)と何度も打ち合わせを重ねながら「どんなシステムが必要か」を言語化していきます。
- どの業務をシステム化するか
- 画面にどんな機能が必要か
- セキュリティ要件は何か
- 処理速度はどの程度必要か
といったことを細かく決めていきます。この工程を担当するのは経験豊富なSEやITコンサルタントです。要件定義の精度がプロジェクト全体の成否を決めると言われるほど重要な工程です。
② 設計——「どう作るか」を決める
要件定義で決まった内容をもとに、システムの設計図を作ります。
- データベースの構造
- 画面遷移と画面レイアウト
- APIの設計
- サーバー・ネットワーク構成
など、開発チームが実際に作業できるレベルまで詳細に落とし込みます。
③ 開発(プログラミング)——「実際に作る」
設計書をもとにプログラマーがコードを書く工程です。使用する言語はプロジェクトによって異なりますが、主なものとしてJava、Python、C#、JavaScript、COBOLなどがあります。

新卒エンジニアがまず担当することが多いのがこの工程です。
④ テスト——「正しく動くか確認する」
開発が終わったら、システムが設計通りに動くかを検証します。
- 想定通りの操作で正しく動くか(機能テスト)
- 大量のデータが来たときに耐えられるか(負荷テスト)
- セキュリティに穴がないか(脆弱性テスト)
銀行や医療、公共交通などの社会インフラを担うシステムは、1つのバグが重大な事故につながる可能性があります。

そのためテスト工程は非常に厳格に行われます!
⑤ 導入(リリース)——「本番環境に切り替える」
テストが完了したら、実際に使われる本番環境にシステムを移行させます。これを「リリース」と呼びます。
銀行や官公庁のシステムは24時間365日動いていることが多いため、影響を最小限にするために深夜や休日にリリース作業を行うことも珍しくありません。
⑥ 運用・保守——「作った後も守り続ける」

システムは作って終わりではありません!
リリース後も不具合対応、機能追加、セキュリティアップデートなど、継続的な保守・運用が続きます。大規模な基幹系システムは10〜20年以上使われることも多く、長期にわたって関わり続けるエンジニアも多くいます。
SIerの特徴まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 仕事の対象 | 銀行・官公庁・流通・通信など大規模顧客 |
| 仕事の性質 | プロジェクト型(チーム・期限・役割分担あり) |
| 規模感 | 数十〜数百人規模のプロジェクトも多い |
| 工程 | 要件定義〜運用まで幅広く関与 |
| キャリア | 上流工程(設計・PM)に進みやすい |
SESとは何か?——「エンジニアを提供する」ビジネスモデル
SESの定義
SESとはSystem Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)の略称です。一言で言えば「エンジニアの技術力をクライアント企業に提供する契約形態」です。

SIerが「プロジェクトを受注してシステムを作る会社」であるのに対し、SESは「人材(エンジニア)を提供する会社」というイメージに近いです。
SESの働き方——「客先常駐」が基本
SESの最大の特徴は客先常駐という働き方です。SES企業Aに所属しているエンジニアが、SIer企業BやIT企業Cのプロジェクトに参加します。その場合、毎日働く場所はB社やC社のオフィスになります。つまり名刺には「A社」と書いてあるけれど、実際に毎日顔を合わせる同僚はB社のメンバー、という状況です。

就活生がよく混乱するのがここです。「自分の会社に所属しているのに、別の会社のオフィスで働く」という状態が最初はイメージしにくいですよね。
SESの仕事内容はプロジェクト次第
SESのエンジニアが担当する仕事は、参加するプロジェクトによって大きく変わります。
若手・未経験入社直後に多い業務
- テスト(動作確認・バグ報告)
- 既存コードの修正・改修
- 運用保守(日常的な監視・問い合わせ対応)
経験を積んだ中堅以降に増える業務
- 新機能の設計・開発
- チームリーダー・サブリーダー
- インフラ構築・クラウド移行
プロジェクトが変わるたびに新しい技術や環境に触れることになるため、技術の幅を広げる機会が多いという特徴があります。一方で、一つの技術を深く極めたい人には「次々と現場が変わる」ことが物足りなく感じる場合もあります。
SESの特徴まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約形態 | 技術者の労働力を時間単位で提供 |
| 働く場所 | クライアント先(客先常駐) |
| プロジェクト | 案件が変わるたびに現場が変わる |
| キャリア | 多様な技術経験を積みやすい |
| 採用傾向 | 未経験・文系採用が比較的多い |
SIerとSESの違い——一番わかりやすい整理方法

ここまで読んでも「まだなんとなく似ている気がする」という人のために、最もシンプルな形で整理します。
| SIer | SES | |
|---|---|---|
| 何を売るか | システム(成果物) | エンジニアの稼働(人材) |
| プロジェクトの主体 | 自社が主体 | クライアント企業が主体 |
| 責任の範囲 | 納品まで全責任を持つ | 担当業務の範囲内 |
| 典型的な顧客 | 銀行・官公庁・大企業 | SIerや大手IT企業 |
| エンジニアの所属感 | 自社プロジェクト | 客先での常駐 |
SIerは「プロジェクトを受け持ち、システムを納品する会社」。SESは「エンジニアをプロジェクトに供給する会社」。これが本質的な違いです。
重要な補足——実は両方やっている会社が多い

就活生が混乱する最大の原因はここにありますね。
現実のIT業界では、SIerとSESを明確に分けられない会社がほとんどです。たとえばある中堅IT企業が、
- 自社で受注した開発プロジェクトを持っている(=SIer的な動き)
- 一方でエンジニアを他社のプロジェクトに派遣もしている(=SES的な動き)
というケースは非常に一般的です。つまり「この会社はSIerです」「あの会社はSESです」という二項対立で考えるのは現実には難しい。

重要なのは、自分が入社した場合にどんな仕事ができるのかを、企業説明会や面接で具体的に確認することです!
就活生が陥りがちな勘違い——「SES=ブラック」は本当か
就活をしていると、こんな情報を目にしたことがあると思います。
「SESはやめとけ」「SESはブラック」「SESは搾取される」
結論から言います。これは一面の事実ではありますが、SES全体に当てはまるわけではありません。
確かに過去には、教育もせず即現場に送り出し、スキルアップの機会も与えないまま単価だけを稼ぐ悪質な企業が存在しました。そういった企業に入社した人の体験談がネット上に広まったことで、SES全体のイメージが下がってしまったのです。
しかし現在では、
- 入社後3〜6ヶ月の充実した研修を提供しているSES企業
- 定期的な社内勉強会やスキルアップ支援がある企業
- キャリア面談を通じて希望のプロジェクトに調整してくれる企業
も多く存在します。「SESかどうか」ではなく「その会社が何をしてくれるか」を見ることが重要です。
人事として面接をしていて感じるのは、「SESはブラック」という先入観で良い企業を見逃している学生が非常に多いという点です。

情報リテラシーの観点からも、極端な口コミに引っ張られすぎない姿勢が大切です。
IT業界の主な職種——「エンジニア」は一種類じゃない
IT業界を志望する就活生の多くが「エンジニア=プログラミングをする人」というイメージを持っています。しかし実際には、IT業界にはさまざまな職種があり、それぞれ役割がはっきり分かれています。
システムエンジニア(SE)
IT業界の中核を担うのがシステムエンジニア(SE)です。SEの仕事は、プログラムを書くことよりも「顧客の要求をシステム設計に落とし込む」ことが中心です。具体的には、
- 顧客との打ち合わせを通じて要件を整理する
- システムの設計書(仕様書)を作成する
- 開発チームへの指示・進捗管理
- 課題発生時の解決策の検討
といった業務が多くなります。技術力だけでなく、論理的思考力・コミュニケーション能力・ドキュメント作成力が非常に重要な職種です。
新卒でSEとして入社した場合、最初は先輩SEのサポートとしてテスト仕様書作成や議事録作成などから始まることが多く、経験を積みながら少しずつ設計業務を担当するようになります。
プログラマー(PG)
プログラマーは、SEが作成した設計書をもとに実際にコードを書いてシステムを作る職種です。使用する言語はプロジェクトによって異なりますが、IT業界全体でよく使われているものとして以下があります。
- Java:企業向けシステム・Webアプリケーション開発で定番
- Python:AI・データ分析・自動化に強く、近年急速に需要が拡大
- C#:Windowsアプリや業務システムに多く使われる
- JavaScript / TypeScript:Webフロントエンド開発に必須
- COBOL:銀行・保険など金融系の古い基幹システムで今も現役
新卒エンジニアが最初に担当するのはプログラマー業務であることが多いです。そこからSEやプロジェクトリーダーへとキャリアアップしていくパターンが一般的です。
インフラエンジニア
インフラエンジニアは、システムが動くための「土台(インフラ)」を作り・維持する職種です。担当する領域は主に以下のとおりです。
- サーバー:OSの設定・ミドルウェアの導入・管理
- ネットワーク:LAN/WANの設計・ルーター/スイッチの設定
- クラウド:AWS・Azure・GCPなどのクラウドサービスの設計・構築
- セキュリティ:ファイアウォール設定・脆弱性対応・ログ監視
アプリケーションエンジニアと比べると地味に見えますが、システムの安定稼働にはインフラが絶対に欠かせません。 特に近年はクラウド技術の普及に伴い、AWSやAzureなどのクラウドスキルを持つインフラエンジニアの需要が急激に高まっています。
資格(AWS認定・CCNA・LinuCなど)でスキルを可視化しやすいという点も、この職種の特徴の一つです。

皆さんがExcelを使うとき、PCを用意してネットワークに繋げ、OSを立ち上げてからアプリを動かすと思いますが、そのアプリを動かす部分をITインフラと呼びます。
プロジェクトマネージャー(PM)
プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体の計画・進行・管理を担う職種です。
- スケジュール作成と進捗管理
- メンバーのアサイン・役割分担
- 予算・コスト管理
- リスクの洗い出しと対応策の検討
- 顧客・関係者への報告・調整
大規模プロジェクトでは数十〜数百人のチームを取りまとめるため、高いマネジメント能力が求められます。一般的にはSEとして数年〜十数年の経験を積んだ後にPMへキャリアアップするケースが多いです。新卒でいきなりPMになることはほぼありませんが、「将来的にプロジェクトをまとめる側になりたい」という志向を面接で伝えることはプラスに働きます。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、企業のIT戦略全体を立案・支援する職種です。システムを「作る」というより、「何を作るべきか、そのためにどう変革すべきか」を提案する立場です。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援
- 業務効率化のためのシステム導入提案
- ITロードマップの策定
技術的な知識に加えてビジネスへの深い理解・高いコミュニケーション能力・提案力が求められます。アクセンチュア・野村総合研究所(NRI)・IBMなどが代表的なITコンサル系企業です。年収水準が高い一方で、要求されるスキルレベルも高く、激務になりやすい職種でもあります。
SIerで働くメリット——大規模・安定・上流への道
SIerで働くことには、就活生にとって魅力的なメリットがいくつかあります。
① 社会インフラに関わる大規模プロジェクトを経験できる
SIerが担当するのは、銀行システム・航空予約システム・電力管理システムなど、社会の根幹を支えるシステムです。
「自分が作ったシステムが、何百万人もの日常生活を支えている」という経験は、SIerでしか味わえないスケール感です。「社会を変える仕事がしたい」「大きなプロジェクトに携わりたい」という志向を持つ人にとって、非常に魅力的な環境と言えます。
② 大手・上場企業が多く、待遇・福利厚生が充実している
NTTデータ・富士通・NEC・日立製作所・SCSKなど、日本を代表するSIer企業は大企業・上場企業がほとんどです。そのため、
- 年収水準が安定している
- 社会保険・退職金制度などの福利厚生が整っている
- 研修制度・育成制度が体系化されている
というメリットがあります。親世代にとっても「大手SIer=安定した職場」というイメージが強く、理解を得やすいという面もあります。
③ 「上流工程」を経験しやすく、キャリアの幅が広がる
SIerは要件定義・設計・プロジェクト管理といった「上流工程」に関わる機会が多いです。

上流工程の経験は、ITエンジニアとして中長期的にキャリアアップしていくうえで非常に重要です!
「手を動かしてコードを書くだけ」から「ビジネス課題を整理してシステムに落とし込む」フェーズへ進むことで、市場価値が大きく上がります。また、将来的にPMやITコンサルを目指す場合にも、SIerでの上流経験は強力な武器になります。
SIerで働くデメリット——技術から遠ざかるリスクと責任の重さ
① 大手SIerでは「管理業務」が中心になりがちで技術が身につきにくい
大手SIerの問題としてよく言われるのが、「コードをほとんど書かない」という状況です。
大手SIerでは、実際の開発作業を下請けのIT企業やSESエンジニアに任せることが多いため、自社社員は打ち合わせ・資料作成・進捗管理が中心になることがあります。「エンジニアとして技術を極めたい」「手を動かしてコードを書き続けたい」という志向の人には、物足りなさを感じる環境かもしれません。

入社前に「実際の開発工程にどれくらい関わるか」を確認することが重要です。
② 大規模プロジェクトはスケジュールがタイトになりやすい
複数の企業・チームが関わる大規模プロジェクトでは、一部の遅延が全体に影響を与えます。プロジェクト終盤になるほど追い込みがきつくなり、納期前後に残業が集中するパターンは珍しくありません。
IT業界全体の働き方改革は進んでいますが、SIerの現場ではプロジェクト管理の難しさから長時間労働が発生しやすい面も残っています。
③ プロジェクト責任が重く、精神的プレッシャーが大きい
SIerはプロジェクトの主体として、納期・品質・コストすべての責任を負います。
たとえば数十億円規模のシステム開発で問題が発生した場合、顧客との関係・会社の信頼・プロジェクトメンバー全員のコンディションに影響が及びます。責任感ある仕事にやりがいを感じる人には向いていますが、プレッシャーに弱い人には辛い局面が生まれやすい環境とも言えます。
SESで働くメリット——技術の幅・スピード・柔軟性
① 短期間でさまざまな技術・環境を経験できる
SESの最大の強みは、多様なプロジェクトに参加することで技術の幅が広がる点です。1つの会社に留まっていれば同じ技術しか経験できないところを、SESでは半年〜1年ごとに異なるプロジェクトに参加することで、
- Javaで開発した翌年はPythonでAIシステムに関わる
- オンプレ環境の翌年はAWSクラウド移行に関わる
といった形で、幅広い技術スタックを実践で積むことができます。これは、若いうちに市場価値を高めたいエンジニアにとって非常に有利な環境です。
② 未経験・文系からでも入りやすい
IT業界全体でエンジニア不足が続いており、特にSES企業では文系・未経験採用を積極的に行っている会社が多いです。
文系学部出身でプログラミング経験ゼロでも、入社後の研修でゼロから学べる環境が整っているSES企業は多くあります。

「IT業界に興味はあるけれど、理系じゃないと無理かも…」という不安を感じている学生にこそ、SESは入り口として機能しやすいと言えます。
③ 技術力と単価が連動し、スキルアップがそのまま報酬に反映されやすい
SESビジネスでは、エンジニアのスキルが高いほど「単価(月額の提供料金)」が上がります。つまり技術力を磨けば磨くほど市場価値が上がり、給与にも反映されやすい仕組みになっています。
AWSやAzureの資格取得、JavaやPythonの実務経験積み上げ、プロジェクトリーダー経験など、具体的なスキルアップが単価交渉の材料になります。「努力が給与に反映される環境で働きたい」という人にはSESの仕組みがマッチしやすいです。

全ての企業が単価連動型ではないから、必ず確認してね!
SESで働くデメリット——環境の不安定さとキャリア設計の難しさ
① 現場によって環境が大きく変わる
SESの最大のデメリットは、プロジェクトが変わるたびに働く環境が変わるという点です。
良い現場であれば
- 優秀な先輩エンジニアから直接学べる
- 最新技術を使えるモダンな開発環境
- チームの雰囲気が良く働きやすい
という状況になりますが、現場によっては
- 技術的に古い環境で成長しにくい
- チームの雰囲気が悪く精神的につらい
- 残業が多くプライベートが犠牲になる
ということも起きえます。どの現場に入るかを自分で完全にコントロールするのは難しいため、ある程度の不確実性を許容できる必要があります。
② 自社への帰属感が薄くなりやすい
毎日別の会社のオフィスで働くため、「自分がどの会社に属しているのか」というアイデンティティが薄くなりやすいという声もあります。自社の仲間と日常的に交流する機会が少ないため、孤独感を覚える人もいます。
これを防ぐために、社内勉強会・懇親会・オンラインコミュニティなどで自社のつながりを保っている優良なSES企業も増えていますが、企業によって取り組み方は大きく異なります。
③ キャリアパスを自分で設計する必要がある
SESでは、プロジェクトが変わるたびに異なる技術・役割を担当することになります。
その分、「自分がどのエンジニアになりたいか」をしっかり描いていないと、さまざまな経験を積んだけれど専門性が中途半端という状態になりがちです。

定期的なキャリア面談で方向性を相談できる企業を選ぶこと、自分なりの「5年後のエンジニア像」を描いておくことが、SESで成長するうえで非常に重要です。
SIerは本当に「楽」なのか?——人事が見る現実
就活生の中に「SIerはSESより楽そう」というイメージを持っている人がいます。給与が高い、大手企業、上流工程……確かにポジティブな面は多いです。しかし、SIerが「楽か」と言われると、まったく違います。

SIerの現場は、「楽」とは正反対の場面も多いのが実態です。
数十〜数百人規模のプロジェクトの取りまとめ
SIerはプロジェクトの主体として、自社メンバー・下請け企業・SESエンジニアを含む大人数を統率します。各チームの進捗を把握し、課題を早期に察知してリカバリー策を打つ。このプレッシャーは相当なものです。
顧客との関係維持と折衝
顧客(銀行・官公庁など)からの要望は、プロジェクト途中でも追加・変更されることがあります。それをどう交渉し、スケジュール・コストに落とし込むか、という高度なコミュニケーションが求められます。
エンジニアとしての技術的成長が遅くなるリスク
前述のとおり、大手SIerでは実際にコードを書く機会が少なくなるケースがあります。「技術者としてのキャリアを積みたい」「手を動かして開発したい」という人にとって、SIerの仕事は想定と異なるものになる可能性があります。
IT企業の見極め方——人事が教える「本当に良い会社」の探し方
IT業界の就活で最も重要なのは、会社の中身を正確に見極めることです。「SIerかSESか」という外形よりも、以下のポイントで企業を比較することをすすめます。
① 研修制度の充実度
未経験・文系で入社する場合、研修制度は最重要チェックポイントです。
良い会社のサイン
- 入社後3〜6ヶ月以上の研修期間がある
- 座学だけでなく実際にコードを書くハンズオン研修がある
- 研修担当者(メンターや先輩社員)が明確に配置されている
要注意のサイン
- 「OJT(現場で覚えてもらいます)」と答えるだけで研修内容が具体的でない
- 「入社翌月から現場に出てもらいます」という説明がある
企業説明会で「研修の内容を具体的に教えてもらえますか」と質問して、答えが曖昧な会社には注意が必要です。
② エンジニアの比率と社内文化
全社員に占めるエンジニアの比率も、技術系企業としての本気度を測る目安になります。
たとえば「社員200名のIT企業で、エンジニアが20名」という会社は、実態は営業・コーディネーター中心の会社である可能性があります。

技術力を高めたい人には向いていない環境かもしれません!
また、社内で技術的な勉強会・LT会・資格取得支援などが行われているかどうかも、エンジニア文化の成熟度を示す指標になります。
③ 扱っている案件・技術領域
企業説明会では積極的に質問して、案件内容を具体的に引き出すことが重要です。
聞いておきたい質問リスト
- どんな業界のシステムを主に手がけていますか?
- 最近の代表的な案件を教えてもらえますか?
- 使用している主な言語・技術スタックは何ですか?
- クラウド(AWS・Azureなど)の案件はありますか?
- 若手社員は最初にどんな業務から担当しますか?
具体的に答えられる会社は、現場のことをきちんと把握している証拠です。逆に、「色々とやっています」「これから伸びていく分野です」という抽象的な回答しか返ってこない会社は要注意です。
④ 離職率・平均勤続年数
転職口コミサイト(OpenWork・Glassdoorなど)で、離職率や在籍社員の口コミを確認することも有効です。
ただし、口コミはネガティブな意見が書かれやすい傾向があるため、複数の口コミを総合的に判断することが重要です。1件の極端な口コミで判断するのは避けましょう。
IT業界に向いている人・向いていない人
向いている人の特徴
継続して学び続けられる人

IT業界は技術の進化スピードが非常に速い世界です。
AI・クラウド・セキュリティ・プログラミング言語……新しい技術や概念が次々と生まれ、数年前の「最新技術」が今では当たり前になっていることも珍しくありません。
「学校を卒業したら勉強終わり」という感覚ではなく、エンジニアになった後も継続して学び続ける姿勢が求められます。逆に言えば、「新しいことを学ぶのが好き」「技術の変化についていくのが楽しい」という人にとってはIT業界は最高の環境です。
問題を論理的に整理して考えられる人

システム開発では、エラーが発生したとき「なぜこのエラーが出たのか」を順序立てて分析する力が不可欠です。
「なんとなくうまくいかない」「雰囲気で直した」ではなく、「ここのロジックが原因で、このような入力値が来たときにこう動いてしまう」という形で因果関係を整理する力。これが論理的思考力です。
文系・理系を問わず、論理的に物事を考える習慣がある人はIT業界で活躍しやすいです。
チームで協力しながら働ける人

「エンジニア=一人で黙々とPCに向かう」というイメージを持つ人が多いですが、現実は全く逆です。
システム開発は常にチームで進みます。
- 朝のスタンドアップミーティングで進捗共有
- 設計内容のレビューと議論
- 問題発生時のチームでの原因分析
- 顧客との定例打ち合わせ
コミュニケーションが苦手なまま入社してしまうと、チームの進行を妨げる原因になりかねません。完璧なコミュニケーション能力は不要ですが、チームメンバーと情報を共有し、協力して動ける力は必要です。
向いていない人の特徴
自分から調べて解決することが苦手な人
エンジニアの仕事は、わからないことを調べて解決する連続です。誰かに答えを教えてもらうまで待つ受け身のスタンスでは、成長のスピードが著しく遅くなります。
「わからないことがあったら、まず自分で調べてから質問する」という姿勢が、エンジニアとして基本的に求められます。
変化を嫌い、同じことを繰り返したい人
IT業界では、プロジェクトが変わるたびに新しい技術・環境・チームに適応する必要があります。SIerでもSESでも、「昨年と同じ仕事を同じ方法で続ける」ということはほぼありません。
変化をストレスと感じる人よりも、変化をチャンスとして楽しめる人の方がIT業界では活躍しやすいです。
未経験でIT業界に入るなら——SESからのスタートは正解か?
文系・未経験でIT業界を目指す就活生にとって、「SES企業から入るべきか」は非常に現実的な問いです。
結論:研修制度と案件環境が整っているSES企業であれば、未経験のスタートとして悪くない。
ただし、「SES企業ならどこでも良い」わけではありません。次のポイントを必ず確認してください。
確認すべきポイント①:入社後研修の内容
未経験から入るSES企業を選ぶ際、研修制度は絶対に妥協してはいけないポイントです。

最低ラインとして「入社後2〜3ヶ月以上のIT研修」があることを確認しましょう!
研修内容としては、
- プログラミング基礎(Java・Pythonなど)
- データベース基礎(SQLなど)
- ネットワーク・インフラ基礎
- ビジネスマナー・文書作成
といった内容が揃っていることが望ましいです。「研修はどのくらいの期間ですか?具体的にどんな内容をやりますか?」と面接や説明会で必ず質問してください。
確認すべきポイント②:扱っている案件の質
SES企業によって、扱っている案件の質は大きく異なります。
良い案件のサイン
- 開発案件(新機能追加・新規システム開発)がある
- 比較的新しい技術(クラウド・モダンな言語)を扱っている
- 若手でも少しずつ設計に関われるようになる
注意すべき案件のサイン
- テスト・運用監視ばかりで開発に関われない
- 使用している技術が10〜20年前のレガシーシステム中心
- 同じ現場に何年も貼り付けになる

「入社後、若手社員はどんな案件からスタートしますか?」という質問を必ずしておきましょう。
IT企業の面接で聞かれること——人事が見ているポイント
よく聞かれる質問と回答のコツ
Q「なぜIT業界を志望していますか?」
これはIT企業の面接で最も聞かれる質問の一つです。
この質問でよくある失敗パターンは、「IT業界は成長しているから」「AIが面白そうだから」という漠然とした答えです。
人事に刺さる答えの構造:
- きっかけ(どんな経験・出来事でITに興味を持ったか)
- 理解(IT業界・この会社の何に惹かれているか)
- 自分との接続(自分の強みや志向とどう結びつくか)
例:「大学のゼミで業務効率化のためにExcelマクロを自分で作った経験があります。その時、ITの力が人の仕事を変えられるということを実感しました。御社では実際の業務システム開発に若手から携われると伺い、その経験を積みながらビジネスとITをつなぐSEになりたいと考えています。」
Q「なぜエンジニアになりたいのですか?」
この質問では、プログラミングが好きかどうかより、エンジニアとして成長し続けようとする意欲と、ITで社会や人に貢献したい思いを伝えることが重要です。
「ものをゼロから作り上げる仕事が好き」「論理的に問題を解決するプロセスが自分に合っている」「デジタルで人の困りごとを解決したい」といった観点から自分の言葉で語れると説得力が増します。
Q「最近気になっているITニュースはありますか?」
これは情報収集力・業界への関心・自分の意見を持てるかを見る質問です。
答え方のコツは、「ニュースの紹介」で終わらずに「自分がそれをどう見ているか、なぜ気になったか」まで話すことです。
参考になるテーマ例:
- 生成AI(ChatGPT・Claude)の業務活用と課題
- 政府・自治体のDX推進
- クラウド移行の加速とセキュリティリスク
- サイバー攻撃の増加と企業のセキュリティ対策
人事が実際に見ているポイント——本音の話
IT企業の採用面接で人事が重視するのは、以下の3点です。
① 学習意欲・成長意欲
未経験採用の場合、技術力そのものより「これからどれだけ伸びるか」を見ています。入社時点でプログラミングができなくても構いません。

「学ぶことが好きか」「困難に当たったときに諦めずに試行錯誤できるか」を、エピソードで示せることが大切です。
「大学で〇〇を学んだとき、最初は全く理解できなかったが、こういう方法で自分なりに取り組み、最終的に〇〇まで理解できた」という具体的な学習エピソードは非常に有効です。
② 論理的思考力——回答の「筋」が通っているか

面接での受け答えが、論理的に整理されているかどうかは非常に重要です。
「結論→理由→具体例→まとめ」という構造(いわゆるPREP法)を意識するだけで、話の伝わりやすさが格段に上がります。また、「なぜそう思うのですか?」という深掘り質問に対して、しっかり答えられるかどうかも見られています。
③ 人柄・協調性——チームで働ける人か
IT業界はチームで仕事をします。技術力が高くても、チームになじめない・コミュニケーションが一方的・指摘を受け入れられない、という人は採用が難しくなります。
面接での会話を通じて「この人とチームで仕事がしたいか」「報連相がちゃんとできそうか」「素直に成長できそうか」という視点で見ています。過度に緊張する必要はなく、素直で誠実な姿勢が最も大切です。
まとめ——SIerとSESの違いより「会社の中身」を見よ

この記事を最後まで読んでくれた就活生に、最も伝えたいことをまとめます。
SIerとSESの違いを理解することは、スタートラインに立つために必要です。でも最終的に重要なのは「SIerかSESか」ではなく、「その会社が自分を育ててくれる環境かどうか」です。
就活でIT企業を選ぶときに確認すべき本質的な問いは、以下の3つです。
- 入社後、自分はどんな仕事ができるのか?(研修・案件内容を具体的に確認)
- 3〜5年後、どんなエンジニアになれるのか?(先輩社員のキャリアパスを聞く)
- この会社の文化・雰囲気は自分に合っているか?(説明会・OB訪問で空気感をつかむ)
IT業界は、これからも社会に不可欠な産業であり続けます。AIの普及・DXの加速・クラウド化の進展により、ITエンジニアの需要は今後さらに高まっていくことは確実です。
不安を感じるのは当然です。でも情報を正しく理解して行動すれば、文系・未経験でもIT業界で活躍するチャンスは十分にあります。

この記事が、あなたの就活の「一歩」を踏み出すきっかけになれば嬉しいです!



