
「AIがどんどん進化しているけど、自分がIT業界に入る頃には、もうエンジニアの仕事なんてないんじゃないか」
就活を控えたみなさんの中には、こんな不安を感じている人も多いのではないでしょうか。SNSやニュースを見ていると、「AIによって将来なくなる仕事ランキング」といった記事の中に、プログラマーやエンジニアといった職種が並んでいることもあります。
一方で、「エンジニアは今後も引く手あまた」「IT人材はまだまだ不足している」という声も根強くあり、正直どちらを信じればいいのか分からない、という人も多いはずです。
私は現役の人事担当者として、年間を通じて多くの候補者と向き合う中で、AIに対する就活生の温度感が、この1〜2年で大きく変わってきたことを肌で感じています。その立場から率直にお伝えすると、「AIによってエンジニアの仕事がなくなる」というのは、半分正解で半分間違いです。

正確に言うと、「今までと同じやり方のエンジニアの仕事」は減っていきますが、「AIを前提とした新しいエンジニアの仕事」は、むしろこれから増えていきます。
問題は、この変化を知らないまま、「なんとなくプログラミングを勉強すればいい」「なんとなくIT企業に入ればいい」という考えのまま就活を進めてしまうと、内定後・入社後に「思っていた仕事と違う」というギャップに苦しむ可能性が高いということです。
この記事では、未経験からIT業界を目指すみなさんに向けて、
- AIによってエンジニアの仕事は具体的にどう変わっていくのか
- そのなかで、未経験就活生はどんな視点を持つべきなのか
- 就活で評価されるのはどんな人材なのか
- 業界・職種によって変化の度合いはどう違うのか
- 今日から始められる具体的なアクションは何か
について、できるだけ具体例や体験談を交えながら、じっくり解説していきます。かなり長い記事になりますが、これからのIT就活の「軸」を作るための内容ですので、ぜひ最後まで読んでみてください。
1.なぜ今「AI時代のIT就活」を考える必要があるのか

1-1.生成AIの普及スピードとIT業界への影響
ここ数年で、ChatGPTやClaude、GitHub Copilotといった生成AI(人間のように文章やコードを生成できるAI)が、驚くほどのスピードでIT業界の現場に浸透しました。
数年前まで、「AIにコードを書かせる」というと、まだ実験段階というイメージがありました。しかし今では、多くのIT企業で、
- コードの下書きをAIに書かせる
- バグ(プログラムの不具合)の原因をAIに調べさせる
- 仕様書や議事録などのドキュメントをAIに作らせる
- テストコード(プログラムが正しく動くか確認するためのコード)をAIに生成させる
- コードレビュー(他の人が書いたコードをチェックする作業)の一次チェックをAIに任せる
といった使い方が、当たり前の光景になりつつあります。

これは決して「一部の先進的な企業だけの話」ではありません。中小のSIer(システム開発を請け負う企業)や、地方のIT企業でも、AIツールの導入が急速に進んでいます。
現場の担当者からも、「AIを使わない開発現場のほうが、もはや珍しい」という声を聞くことが増えました。特にここ1年ほどは、新卒研修のカリキュラムの中に「生成AIの使い方」を組み込む企業が急増しており、AIリテラシーは「あると有利なスキル」から「持っていて当然の前提知識」へと位置づけが変わりつつあります。
1-2.「知らなかった」では済まされない時代に
こうした変化のスピードを考えると、これからIT業界に入る就活生にとって、「AIの存在を前提としない就活対策」は、実はかなりリスクが高いと言えます。
例えば、面接で「なぜIT業界を志望するのですか」と聞かれたときに、
- AIについて何も触れず、「プログラミングを勉強したいから」とだけ答える
- AIの話題が出た瞬間に、「AIは怖いので詳しくは分かりません」と答えてしまう
- 逆に「AIがあるので技術的なことは分からなくても大丈夫だと思います」と答えてしまう
このような回答をしてしまうと、面接官からは「業界研究が浅い」「時代の変化についていけていない」「危機感が足りない」という印象を持たれてしまう可能性があります。
実際に私が面接を担当した中でも、AIについて聞かれた瞬間に言葉に詰まってしまう学生は少なくなく、その多くが他の質問への回答は悪くなかったにもかかわらず、総合評価を下げてしまうケースを何度も見てきました。
一方で、以下の学生は、それだけで他の就活生から一歩リードした印象を与えることができます。
- AIによって仕事の内容がどう変わりつつあるかを、自分の言葉で説明できる
- そのうえで、自分がどう関わっていきたいかを具体的に考えている
- AIの限界(できないこと)についても、ある程度理解している
「AIについて詳しい専門家になる必要はありません。ただし、AIを前提に考える習慣は、今のうちから持っておく必要がある」——これが、この記事で一番お伝えしたいポイントです。
1-3.よくある誤解:「AI=プログラミング不要」ではない
ここで、よく聞く誤解を一つ整理しておきます。
「AIがコードを書いてくれるなら、プログラミングを勉強しなくてもエンジニアになれますよね?」
たしかに、AIに指示を出せば、それなりのコードは書いてくれます。しかし、AIが出したコードが正しいかどうかを判断する力は、人間にしか持てません。プログラミングの基礎知識がなければ、
- AIが書いたコードにバグがあっても気づけない
- AIに何を頼めばいいのか、そもそも具体的な指示が出せない
- セキュリティ上の問題があっても見抜けない
- 複数のAIの提案のうち、どれが自社のシステムに合っているか判断できない
という状態になってしまいます。つまり、「プログラミングを勉強しなくていい時代」ではなく、「プログラミングの基礎+AI活用力の両方が必要な時代」になった、というのが正確な理解です。

この点については、後ほど3章でさらに詳しく解説します。
1-4.反対意見にも目を向けてみる
一方で、「AI時代の就活対策なんて、そこまで神経質になる必要はないのでは」という意見もあります。実際、次のような考え方も一定の説得力を持っています。
- IT業界は昔から技術トレンドの移り変わりが激しく、AIもその一つに過ぎない
- 新卒研修でどうせイチから教えてもらえるので、就活の時点で神経質になる必要はない
- AIの話ばかりしすぎると、逆に「流行りに乗っているだけ」という印象を与えかねない
これらの意見にも一理あります。実際、面接で無理にAIの話を詰め込みすぎて、かえって内容が薄っぺらくなってしまう学生もいます。
大切なのは、AIについて語ること自体が目的ではなく、「自分なりの視点を持っているかどうか」が評価されるという点です。この記事で紹介する内容も、丸暗記して話すのではなく、自分の言葉に落とし込んで使ってもらえればと思います。
1-5.今のうちに知っておきたい、AIにまつわる基礎知識
AI時代の就活対策と言っても、難しいエンジニアリングの知識まで身につける必要はありません。まずは、次のような基礎的な理解があれば十分です。
- 生成AIは「万能」ではなく「間違えることもある」:AIが出した回答や情報は、必ずしも正確とは限りません。この性質を「ハルシネーション(AIが事実と異なる情報をもっともらしく生成してしまう現象)」と呼びます
- AIは、指示(プロンプト)の出し方によって回答の質が変わる:同じ質問でも、聞き方次第で得られる答えの精度が大きく変わります
- AIは過去のデータをもとに答えを作る:そのため、最新の情報や、非公開の社内情報については弱い場合があります
こうした基礎知識を持っているだけでも、面接で「AIについてどう思いますか」と聞かれた際に、表面的な感想ではなく、一段深い回答ができるようになります。

例えば、「AIは便利ですが、出てきた情報をそのまま信じるのではなく、自分で裏付けを取る姿勢が大切だと考えています」という一言を添えるだけでも、印象は大きく変わります。
2.5年後、エンジニアの仕事はどう変わるのか

2-1.なくなる仕事、変わる仕事、残る仕事
「AIでエンジニアの仕事がなくなる」という表現は、少し乱暴です。より正確に言うと、仕事の中身が「作業」から「判断」にシフトしていく、というのが実態に近いイメージです。
イメージをつかみやすいように、簡単な表で整理してみます。
| 分類 | 具体的な仕事内容 | 5年後の見通し |
|---|---|---|
| 定型的な作業 | 決まったパターンのコード入力、単純な修正作業 | AIによる代替が進みやすい |
| 情報収集・調査 | 仕様の調べもの、エラーの原因調査 | AIが下調べを担い、人はそれを確認する形に |
| ドキュメント作成 | 議事録、仕様書、マニュアル | AIが下書きを作成し、人が仕上げる形に |
| テスト・検証 | 動作確認、テストケース作成 | AIが土台を作り、人が抜け漏れを補う形に |
| 設計・要件定義 | 「何を作るべきか」を考える仕事 | 人間の役割として残りやすい |
| 品質・セキュリティ判断 | コードの妥当性やリスクの見極め | 人間の判断がより重要になる |
| コミュニケーション | クライアントやチームとの調整 | 引き続き人間が担う領域 |

この表からも分かる通り、「手を動かして作業する仕事」は減り、「考えて判断する仕事」は増えていくという方向性が見えてきます。
ただし、これは「作業系の仕事がゼロになる」という意味ではありません。AIが下書きを作っても、最終的にそれをチェックし、責任を持って世に出すのは人間の役割であり続けます。
むしろ、「作業をする人」から「作業の質を見極める人」へと役割が格上げされる、と捉えるほうが実態に近いでしょう。
2-2.求められるスキルの変化
これまでの新卒未経験エンジニアに求められていたのは、主に「基礎的なコーディングスキル」でした。しかし、AI時代には、それに加えて次のようなスキルが重視されるようになっていくと考えられます。
- 課題発見力:何が問題なのかを見つける力
- 設計思考:どう作れば使いやすいか、拡張しやすいかを考える力
- AIへの指示力(プロンプト力):AIに的確な指示を出す力
- 検証力:AIが出した結果が正しいかどうかをチェックする力
- コミュニケーション力:人とAI、あるいは人と人をつなぐ力
- 学習の継続力:新しいツールや技術トレンドを、自分から学び続ける力
これは決して「新卒未経験には難しすぎる話」ではありません。むしろ、学生時代からこうした視点を持って準備をしておくことが、他の就活生との差別化になるという点で、大きなチャンスでもあります。

特に「学習の継続力」は、AIツール自体が数か月単位でアップデートされていく現在の状況において、非常に重要な資質として評価されています。
2-3.体験談:面接で感じた「差」
以前、ある未経験の就活生が面接で、こんな話をしてくれたことがあります。
「大学の課題で簡単なWebアプリを作った際、最初はすべて自分で調べながらコードを書いていました。途中からAIツールを使い始めたのですが、AIが出してくれたコードをそのまま使うのではなく、『なぜこの書き方をしたのか』を一つひとつ調べながら進めました。結果的に、AIを使わなかったときより深く理解できた部分もありました」
この学生は、プログラミングの経験自体はまだ浅かったものの、「AIを使いながらも、自分の頭で考えることをやめなかった」という姿勢が非常に印象的でした。こうしたエピソードは、AI時代の採用面接において、非常に説得力のあるアピール材料になります。
また別の学生は、こんな話をしてくれました。
「サークルの広報用にWebサイトを作ろうとしたとき、最初はAIに丸ごと作らせようとしたのですが、出てきたコードの意味がまったく分からず、修正もできませんでした。そこで一度基礎に立ち返り、HTMLとCSSの本を読みながら、AIが出したコードを一行ずつ理解する作業をしました。最終的には、AIと自分の知識を組み合わせて、当初より短い時間でサイトを完成させることができました」
この体験談も、「最初は失敗したが、そこから学び方を修正した」というプロセスが伝わってくる点で、非常に評価しやすいエピソードです。失敗談であっても、そこからの学びを言語化できれば、十分に強いアピール材料になります。
2-4.よくある質問:「文系未経験でもAI時代のエンジニアになれますか?」

結論から言うと、十分になれます。
むしろ、AI時代になったことで、「ゴリゴリのコーディングスキル」だけが評価される時代から、「課題発見力」「論理的思考力」「コミュニケーション力」といった、文系出身者が培ってきた力も評価されやすい時代に変わりつつあります。
私が担当したある内定者は、法学部出身でプログラミング未経験でしたが、「契約書のレビューを効率化するアイデア」を面接でAIと絡めて話し、法律知識とAI活用の掛け合わせという独自の切り口で高い評価を得ました。専門知識とAI、あるいは文系的な思考力とAIの掛け合わせは、むしろ大きな武器になり得るのです。
3.未経験だからこそ持つべき視点

3-1.「AIを使える人」で終わらない
就活生の自己PRでよく見かけるのが、「ChatGPTを日常的に使っています」「AIツールを使いこなせます」といったアピールです。
もちろん、AIに触れた経験があること自体は悪いことではありません。しかし、面接官として率直に言うと、「AIを使ったことがある」だけでは、正直あまり差別化になりません。
今の学生であれば、多かれ少なかれAIツールに触れた経験がある人がほとんどだからです。レポート作成や情報収集にAIを使うのは、もはや珍しいことではなく、「使っています」というだけの発言は、面接官にとって目新しい情報ではなくなってきています。
大切なのは、その一歩先にある
- AIを使って、どんな課題を解決したのか
- AIの出した答えを、どう検証・修正したのか
- AIを使ったことで、自分の理解や成果がどう深まったのか
- AIが苦手なこと・間違えたことを、どう見抜いて対応したのか
という「プロセス」の部分です。ここまで語れると、面接官には「単にツールを使えるだけでなく、成果につなげる力がある」という印象を与えることができます。
「AIを使える人」ではなく「AIを使って成果を出せる人」——この視点の違いは、これからの就活で非常に重要になってきます。
3-2.プログラミング基礎学習はやはり必要
先ほども触れましたが、改めて整理しておきます。AIがコードを書いてくれる時代だからこそ、基礎的なプログラミング知識を持つ人と、持たない人の差は、むしろ広がっていくと考えられます。
理由はシンプルです。
- 基礎知識がある人:AIの出したコードを理解し、間違いに気づき、より良い形に修正できる
- 基礎知識がない人:AIの出したコードをそのまま使うしかなく、間違いに気づけない
これは、たとえるなら「電卓」に近い関係です。電卓が計算をしてくれるからといって、四則演算の仕組みをまったく理解していない人が、複雑な会計処理や統計分析を任せられるかというと、そうではありませんよね。AIとプログラミングの関係も、これに近いイメージです。
電卓を使いこなすためには、そもそも「何を計算すべきか」を理解している必要があるのと同じで、AIを使いこなすためには、「何を作りたいのか」「その仕組みはどうなっているのか」を理解している必要があるのです。
未経験からIT業界を目指すのであれば、
- ITパスポート、基本情報技術者試験などの資格学習
- Progateやドットインストールなどでの基礎学習
- 簡単なアプリやWebサイトを実際に作ってみる経験
- 学んだ内容をAIに説明してもらいながら、理解を深める学習スタイル
といった学習は、引き続き重要な意味を持ちます。特に最後の「AIに説明してもらいながら学ぶ」というスタイルは、AI時代ならではの効率的な学習法として、今後さらに重要性が増していくと考えられます。
3-3.よくある誤解Q&A
ここで、未経験就活生からよく寄せられる質問をQ&A形式で整理します。
Q1.AIが発達しているのに、今からプログラミングを勉強する意味はありますか?
A.あります。むしろ、AIが出した結果を正しく判断するために、基礎知識が今まで以上に重要になっています。ゼロから全部書けるようになる必要はありませんが、「コードを読める」レベルは目指す価値があります。
Q2.AIツールを使った経験がまったくないのですが、不利になりますか?
A.経験自体がまったくないのは、やや不利に働く可能性があります。ただし、今から少しずつ触れておけば十分間に合います。まずは無料で使える生成AIツールで、簡単な調べものや文章の壁打ちに使ってみることから始めましょう。
Q3.「AIに詳しい」とアピールしても大丈夫ですか?
A.具体的なエピソードが伴っていれば問題ありません。ただし、「詳しい」という言葉だけが先行してしまうと、深掘りの質問に答えられず、逆効果になることもあります。エピソードベースで語れるように準備しておきましょう。
Q4.エンジニア以外の職種(営業、企画など)でも、AI時代の視点は必要ですか?
A.必要です。IT業界であれば、営業職やコンサルタント職であっても、AIによって業務の進め方が変わっていく前提で、企業や顧客の課題を考える必要があります。エンジニア職に限らず、IT業界を目指すすべての人に関係するテーマだと考えてください。
Q5.AI関連の資格を取ったほうがいいですか?
A.必須ではありませんが、興味があれば取得を検討する価値はあります。ただし、資格取得そのものが目的にならないよう注意が必要です。「なぜその資格を取ろうと思ったのか」「取得後に何を学んだのか」まで説明できるようにしておきましょう。
4.就活で評価される「AI時代の人材像」とは

4-1.企業が求める3つの力
これまでの内容を踏まえると、AI時代のIT就活で評価されやすい人材像は、大きく次の3つの力に整理できます。
- 考える力(課題発見・設計思考):何を作るべきか、なぜ必要なのかを考えられる力
- 使いこなす力(AI活用・検証力):AIを道具として使いこなし、結果を正しく判断できる力
- 伝える力(コミュニケーション・言語化力):自分の考えを人に分かりやすく伝えられる力
この3つは、いずれも「未経験だから身につけられない」という種類の力ではありません。アルバイト、サークル活動、ゼミ、学園祭の運営など、学生生活のあらゆる経験の中に、これらの力を培ってきたエピソードは眠っています。大切なのは、それを「IT業界・AI時代」という文脈に翻訳して伝えることです。
4-2.ES・面接でどうアピールするか(例文)
例文(改善前)
「私はAIに興味があり、ChatGPTを使ってレポート作成を効率化していました。IT業界でもAIを活用して活躍したいです。」
この例文は、悪くはないのですが、少し具体性に欠けます。「何を」「どう」効率化したのかが見えません。
例文(改善後)
「私はゼミの研究発表資料を作成する際、生成AIを使って情報収集の下調べを行いました。ただし、AIの出した情報をそのまま使うのではなく、一次情報にあたって内容を検証し、誤りがあった箇所を修正したうえで発表資料に反映しました。この経験から、AIを『答えを出す道具』ではなく『考えを深めるための壁打ち相手』として活用する姿勢が身につきました。IT業界でも、AIを前提とした業務が広がっていくと考えており、こうした検証力や課題発見力を活かして、単なる作業者ではなく、価値を生み出せるエンジニアを目指したいと考えています。」
このように、「具体的な行動」→「そこで得た気づき」→「志望する仕事にどうつながるか」という流れで構成すると、AI時代を意識した説得力のある自己PR・志望動機になります。
4-3.体験談:評価が高かった学生の共通点
これまで多くの就活生を見てきた中で、AI時代の視点をうまく取り入れられていた学生には、ある共通点がありました。それは、「AIについて語るときも、必ず自分の実体験に基づいて話していた」ということです。
ニュースやSNSで見聞きした一般論をそのまま話す学生は多いのですが、「自分は実際にこう使って、こう感じた」というレベルまで語れる学生は、面接官の印象に強く残ります。

この記事を読んでいるみなさんも、ぜひ今日から、AIツールに触れながら「自分なりの気づき」をメモしておく習慣をつけてみてください。それが、そのまま面接でのエピソードになります。
4-4.評価されにくいNGパターンにも注意
一方で、面接の場で評価を下げてしまいがちなパターンもいくつか存在します。
- AIに関する一般論だけを話し、自分の経験が伴っていない
- 「AIがすごい」という感想で終わり、自分がどう関わりたいかが語られていない
- 逆にAIへの不安や否定的な感情ばかりを強調してしまう
- 質問されていないのに、AIの話題を無理やり詰め込んでしまう
これらは、いずれも「準備不足」あるいは「アピールしようとしすぎて空回りしてしまう」ケースです。大切なのは、聞かれたことに対して、自分の実体験を交えながら、落ち着いて答えることです。
5.業界・職種によって変化の度合いは異なる

5-1.職種別に見るAIの影響度
IT業界と一口に言っても、SIer、Web系企業、ソフトウェア企業、ITコンサルティング、インフラ、セキュリティなど、さまざまな仕事があります。そして、AIによる影響の度合いは、職種によって大きく異なります。
| 職種 | AIによる変化の特徴 | 未経験者が意識すべきこと |
|---|---|---|
| プログラマー・システムエンジニア | コーディング作業がAI支援中心に。設計・検証力が重視される | 基礎文法+読解力を優先して学ぶ |
| インフラエンジニア | 構築・監視作業の一部が自動化。障害対応の判断力が重要に | 仕組みの理解と、トラブル時の対応力を意識する |
| セキュリティエンジニア | 脅威検知の一次対応はAIが担う一方、最終判断は人間が必須 | リスク感度と倫理観を養う |
| ITコンサルタント | 資料作成・情報収集がAI支援中心に。課題設定力が最重要 | 業界知識と論理的思考力を磨く |
| 営業・カスタマーサクセス | 提案資料作成の効率化が進む。顧客理解と関係構築が差別化要因に | コミュニケーション力を強みとして育てる |
このように、「AIに仕事を奪われる」というより「AIと組み合わさることで、求められるスキルの重心が変わる」というのが、より正確な理解です。志望する職種によって、優先して身につけるべきスキルの重心も変わってくるため、業界研究・職種研究の際は、この視点を持って情報を整理してみましょう。
5-1-2.体験談:職種研究で視野が広がったケース
ある就活生は、当初「プログラマーになりたい」という漠然とした志望動機しか持っていませんでした。しかし、OB訪問でインフラエンジニアやITコンサルタントなど、複数の職種の話を聞くうちに、「自分は特定の技術を極めるより、複数の関係者の間に立って課題を整理する仕事のほうが向いているかもしれない」と気づき、志望職種をITコンサルタント寄りに広げました。
最初から一つの職種に絞り込みすぎず、複数の職種を比較したうえで自分に合うものを選ぶというプロセス自体が、良質な自己PR・志望動機の材料になります。

特にAI時代は、職種ごとの仕事内容の変化が大きいため、「なぜこの職種なのか」を自分の言葉で説明できることが、より一層重要になっています。
5-2.企業規模による違いにも目を向ける
AIの導入状況は、企業規模によっても差があります。大手IT企業やメガベンチャーでは、AI活用が業務プロセスに深く組み込まれている一方、中小のIT企業や、これからDX(デジタル化)を進めていく企業では、AI活用がまだこれからというケースも珍しくありません。
これは、どちらが良い・悪いという話ではなく、「自分がAI活用の最前線で学びたいのか」「これから導入を進める企業で、AI活用の仕組みづくりから関わりたいのか」という、キャリアの方向性を考えるうえでの一つの判断材料になります。企業選びの軸として、こうした視点も取り入れてみると、より解像度の高い企業研究ができるようになります。
6.今日から始められる6つのアクション

ここまで読んで、「なんとなく方向性は分かったけれど、具体的に何をすればいいのか」と感じた人も多いと思います。ここからは、今日から実践できる6つのアクションを紹介します。
6-1.IT業界研究をAI視点でやり直す
すでに業界研究を進めている人も、一度「AIの視点」を追加して見直してみましょう。
- 志望している企業や業界で、AIはどのように活用されているか
- その企業の求人票やIR資料、採用ページに、AI関連の言及があるか
- 面接で「AIについてどう思うか」と聞かれたら、どう答えるか
- 競合他社と比べて、その企業のAI活用はどのくらい進んでいるか
こうした視点を持って企業研究をし直すだけで、志望動機の説得力が大きく変わります。実際に、企業の採用ページやプレスリリースを検索するだけでも、「AI活用によってどんな業務効率化を進めているか」といった情報が見つかることが多くあります。

こうした情報を志望動機に盛り込むことで、「表面的な情報だけで語っていない」という印象を与えることができます。
IT業界研究、企業研究については以下の記事でまとめていますのでぜひご覧ください。
≫未経験からのIT就活完全ガイド|業界構造・職種・企業選びを徹底解説
6-2.プログラミング基礎+AIツール活用を同時に学ぶ
これから学習を始める人は、プログラミングの基礎学習と並行して、AIツールの活用にも触れてみましょう。
- Progateなどでプログラミングの基本文法を学ぶ
- 学びながら分からない部分をAIに質問し、解説してもらう
- AIが生成したコードを、自分で読み解いてみる
- 簡単な成果物(ポートフォリオ)を、AIと自分の力を組み合わせて完成させる
この「基礎学習+AI活用」のセットで学ぶ経験自体が、そのまま面接エピソードになります。特に、完成した成果物を面接で見せられるようにしておくと、口頭の説明だけでは伝わりにくい熱意や理解度を、具体的に示すことができます。
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6-3.自己分析を「軸」に落とし込む
自己分析をする際は、単に「自分の強み・弱み」を洗い出すだけでなく、
- 自分は何ができるのか
- 自分は何が好きなのか
- どんな働き方をしたいのか
- AI時代のIT業界で、どんな価値を提供したいのか
という問いを組み合わせて考えてみましょう。「自分の強み」×「AI時代のIT業界で求められる力」を掛け合わせることで、他の就活生と差別化された、一貫性のある軸を作ることができます。
例えば、アルバイトで業務改善をした経験があるなら、「決められた作業をこなす」だけではなく、「問題を見つけ、原因を考え、改善する」という強みとして捉えることができます。AI時代には、こうした「考えて改善する力」がますます重要になる可能性があります。
自己分析はこれからの人は、以下の記事で網羅的にまとめていますので、ぜひご覧ください。
≫未経験からのIT就活の基本|自己分析・志望動機・自己PR・ESを徹底解説
6-4.OB・OG訪問で現場のリアルを聞く
一人で情報を集めていると、どうしても視野が偏りがちです。実際にIT業界で働いている先輩に、次のような質問をしてみましょう。
- 実際の現場では、AIをどのように業務に取り入れていますか
- 若手・未経験エンジニアの仕事は、この数年でどう変わりましたか
- これから就活生に身につけてほしいスキルは何だと思いますか
- AIの導入によって、逆に大変になったことはありますか
現場の生の声を聞くことで、自分の考えをアップデートすることができます。就活エージェントに相談するのも、一つの有効な方法です。
自分だけで考えていると、どうしても情報が偏ってしまうため、現場で働く人から情報をもらい、自分の考えをアップデートするという行動は、AI時代の就活において特に重要な意味を持ちます。
OB・OG訪問したいけど、どうしたらいいか分からない、という方は、
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6-5.適性検査・面接対策も並行する
AI時代について考えることは大切ですが、それだけでは内定にはつながりません。SPIや玉手箱などの適性検査対策、エントリーシートの作成、面接練習といった、従来からの選考対策も並行して進める必要があります。
「自分の軸を作ったうえで、選考対策を積み重ねる」という順番を意識しましょう。AI時代の視点を持つことは、あくまで志望動機や自己PRに深みを与えるための土台であり、それ自体が選考対策を置き換えるものではない、という点を忘れないようにしてください。
適性検査対策がまだの人は、以下の記事を参考に対策を進めてください。
≫IT業界を目指す就活生のための適性検査攻略ガイド〜SPI・CAB・GAB・玉手箱・TG-Webを徹底解説〜
6-6.必要なら資格取得や学習経験も並行して作る
IT未経験の場合は、学習経験を作ることも有効です。例えば、
- ITパスポート
- 基本情報技術者試験
- プログラミング学習(Progate、ドットインストールなど)
- プログラミングスクールでの短期集中学習
- Webサイトやアプリの簡単な制作
などです。重要なのは、資格やスクールそのものを目的にしないこと。「なぜ学んだのか」まで説明できるようにすることが大切です。
「IT業界で働くために、まず基礎知識を身につけようと思い、学習を始めました。学ぶ過程でAIツールも積極的に活用し、効率的に理解を深めることを意識しました」という経験は、未経験者にとって一つの強力なアピール材料になります。
プログラミングスクールや資格取得、就活サービスについては以下の記事でまとめていますのでご覧ください。
≫【未経験からIT業界へ】資格・スクール・就活サービス完全活用ガイド
6-7.アクションチェックリスト
最後に、これまでの内容を簡単なチェックリストにまとめました。ぜひ活用してください。
- [ ] AI視点で業界研究・企業研究をやり直した
- [ ] プログラミング基礎学習に着手した、または継続している
- [ ] AIツールを実際に使い、気づきをメモしている
- [ ] 自己分析で「AI時代に自分がどう価値を出したいか」を考えた
- [ ] OB・OG訪問や就活エージェントへの相談を予定・実施した
- [ ] 適性検査・ES・面接対策のスケジュールを立てた
- [ ] 志望職種に応じて、優先すべきスキルの重心を整理した
7.10月から情報が一気に増える。その前に「軸」を作ろう

これから就活を始める人にとって、就活が本格化する時期は、大きな変化が起きるタイミングです。就活を始める学生が増え、企業の募集も増え、説明会やイベント、求人など、さまざまな情報が一気に入ってくるようになります。
情報が増えることはチャンスでもあります。しかし、自分の軸がない状態で情報だけが増えると、
「この会社も良さそう」
「この仕事も面白そう」
「こっちの企業のほうが条件がいいかも」
と迷ってしまいます。特にAIに関する情報は、日々新しいニュースが飛び交うため、軸のないまま情報を追いかけていると、かえって不安が大きくなってしまうことも少なくありません。
だからこそ、情報が増える前に、
「自分は何をしたいのか」「AI時代に、自分はどんな価値を提供したいのか」
を考えておきましょう。
就活軸がまだ定まっていない人は、以下の記事をご覧ください。就活は早めに戦略を決める必要があります。
≫未経験からのIT業界の就活、軸なしで不安?後悔しないための戦略設計と見つけ方
8.未経験者がつまずきやすいポイントとその対策

最後に、実際の就活サポートの現場でよく見かける「つまずきポイント」を、対策とあわせて紹介します。自分に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
8-1.「AIの話をしなきゃ」と気負いすぎてしまう
この記事を読んで、「面接でAIの話をしないと評価されないのでは」と身構えてしまう人がいますが、それは少し違います。すべての質問にAIを絡める必要はありません。
志望動機や自己PRの土台は、あくまで自分の経験や価値観です。AIの視点は、そこに深みを加えるための一つの要素として使えば十分です。無理にAIの話を差し込もうとすると、かえって話の一貫性が崩れてしまうことがあるので注意しましょう。
対策:ES・面接の回答は、まず自分の経験ベースで組み立てる。そのうえで、「志望動機」や「今後のキャリア」を語る部分で、AI時代の視点を自然に盛り込む、という順番を意識しましょう。
8-2.勉強を始めても、何から手をつければいいか分からない
「プログラミングを勉強しよう」と思っても、言語の種類やツールの多さに圧倒されて、結局手が止まってしまう人も多くいます。
対策:最初から完璧を目指さず、まずは1つの入門教材(Progateなど)を最後まで終わらせることを目標にしましょう。並行して、分からない用語や概念が出てきたら、AIに「初心者にも分かるように説明して」と聞く習慣をつけると、学習のつまずきを減らすことができます。
8-3.AIを使うこと自体に罪悪感を感じてしまう
「AIに頼ると、自分の力にならないのでは」と感じ、AIの活用を避けてしまう学生もいます。気持ちは理解できますが、これから就職する現場では、AIを使わずに仕事を進めること自体が非効率とみなされる場面が増えていきます。
対策:「AIに全部やってもらう」のではなく、「AIと一緒に考える」という使い方を意識しましょう。自分で一度考えたうえでAIに相談する、AIの答えに対して『本当にそうか』と問い直す、といった使い方をすれば、AIを使いながらも自分の思考力を鍛えることができます。
8-4.エピソードが小さすぎて、アピールになるか不安
「大したエピソードがない」と感じて、自己PRに自信を持てない学生も多くいます。しかし、面接官が見ているのは、エピソードの規模の大きさではなく、そこでどう考え、どう行動したかというプロセスです。
対策:小さな経験でも構わないので、「困った場面」「工夫した場面」「気づきを得た場面」を書き出し、そこにAI活用の視点や、課題発見・検証のプロセスを絡めて言語化してみましょう。エピソードの大きさよりも、思考のプロセスの深さが評価されます。
面接対策に不安のある方は、以下の記事でまとめていますのでご覧ください。
≫未経験からIT業界を目指すあなたへ | 現役面接官が面接対策のすべてを教えます
9.用語集:この記事に出てきたIT・AI関連用語

IT業界に馴染みのない方向けに、この記事で使用した主な用語を簡単にまとめました。就活の会話や面接の場でも役立つはずです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 生成AI | 文章、画像、コードなどを自動で作り出すことができるAI技術のこと。ChatGPTやClaudeなどが代表例 |
| プロンプト | AIに対して出す指示や質問の文章のこと。指示の出し方次第でAIの回答の質が大きく変わる |
| コーディング | プログラムのコード(命令文)を書くこと |
| デバッグ | プログラムの不具合(バグ)を見つけて修正する作業のこと |
| コードレビュー | 他の人が書いたプログラムを確認し、問題がないかチェックする作業のこと |
| SIer(エスアイヤー) | 企業向けにシステムの企画・開発・運用までを請け負う会社のこと |
| DX(デジタルトランスフォーメーション) | デジタル技術を活用して、業務やビジネスモデルを変革すること |
| ポートフォリオ | 自分が作成したアプリやWebサイトなど、スキルを証明するための成果物集のこと |
| 適性検査 | 企業が応募者の能力や性格の傾向を把握するために実施するテストのこと |
このように、専門用語を一つひとつ理解しながら業界研究を進めることも、AI時代の就活対策の一部として意識しておくとよいでしょう。
分からない用語が出てきたときに、AIに「初心者向けに説明して」と聞いてみる習慣をつけておくと、効率よく知識を増やしていくことができます。
10.まとめ:AIを恐れるのではなく、前提として未来を考える
ここまで、AI時代のIT就活について、5年後のエンジニアの仕事の変化から、未経験就活生が持つべき視点、評価される人材像、業界・職種による違い、今日からできる具体的なアクションまで、幅広く解説してきました。
改めて大切なポイントを整理すると、次の通りです。
- AIによってエンジニアの仕事は「なくなる」のではなく、「作業から判断へ」変化していく
- 「AIを使える人」ではなく「AIを使って成果を出せる人」を目指す必要がある
- プログラミングの基礎学習は、AI時代だからこそむしろ重要性が増している
- 未経験・文系であっても、課題発見力やコミュニケーション力を活かせるチャンスがある
- 職種や企業規模によって、AIによる影響の度合いや求められるスキルの重心は異なる
- 自己PR・志望動機は、具体的な実体験に基づいて語ることが説得力につながる
- AI時代の視点を持ちつつも、従来の選考対策も並行して進める必要がある
これから就活が本格化していくと、説明会やイベント、求人情報など、さまざまな情報が一気に押し寄せてきます。情報が増えること自体はチャンスですが、自分の軸がないまま情報だけが増えると、かえって迷いや不安が大きくなってしまいます。

だからこそ、情報が増える前の今のうちに、「5年後、自分はどんな仕事をしていたいのか」「AIが当たり前になった社会で、自分はどんな価値を提供したいのか」を、じっくり考えておくことをおすすめします。
AIに仕事を奪われない人を目指すのではなく、AIを活用しながら、人間にしかできない判断や価値提供ができる人材を目指していきましょう。
この記事が、みなさんのIT就活の第一歩を考えるきっかけになれば幸いです。







