

「未経験からエンジニアになれる!」という言葉を、あなたも一度は見たことがあるはずです。
プログラミングスクールの広告、SNSのインフルエンサー、転職成功体験記——どれも明るい言葉で溢れています。「3ヶ月で転職成功!」「文系出身でも大丈夫!」「独学でエンジニアになれた!」
でも、正直に言わせてください。
未経験からITエンジニアになる道は、決して簡単ではありません。
私はIT企業で採用担当をしています。毎年、何百人もの未経験学生の就活を間近で見てきました。その経験から言えることがあります。
「なんとかなるだろう」という気持ちで飛び込んだ人のほとんどは、途中で挫折するか、入社後に深刻な悩みを抱えます。
この記事では、甘い言葉を並べるのではなく、現役採用担当者の視点から、未経験エンジニア就活の”リアル“をお伝えします。

厳しいことを書きますが、それは皆さんに準備をしてほしいからです。本当に覚悟を決めて動いている人には、必ず道は開けます。
- なぜ「未経験エンジニア就活は甘くない」と言い切れるのか
- 未経験エンジニア就活の「本当の壁」
- それでも未経験からエンジニアを目指す君へ
- 採用担当が「この未経験学生は違う」と感じた共通点
- 具体的に何をすればいいのか|未経験エンジニア就活のロードマップ
- 就活で必ず聞かれる質問とその答え方
- エントリーシート(ES)で差をつけるポイント
- IT業界に入ってから後悔しないために|入社前に知っておくべき現実
- 採用担当として「やめてほしい」と感じる就活行動
- IT企業を選ぶときに確認すべき10のチェックリスト
- 「やっぱりエンジニアじゃないかも」と感じたときに考えること
- 就活を進める上での「心の準備」
- まとめ|未経験からエンジニアになるための「本当の覚悟」
- よくある質問(FAQ)
なぜ「未経験エンジニア就活は甘くない」と言い切れるのか
採用担当が見てきたリアルな数字

私が関わってきた採用活動の中で、未経験学生の選考を振り返ると、ある傾向が浮かび上がります。
毎年、「エンジニアになりたいです」と言って応募してくる学生の大半が、技術的な準備をほとんどしていません。
面接でよく聞く言葉があります。
このような学生は、残念ながら選考を通過することが難しいです。なぜなら、IT業界では「入社してから教えてもらえる」という感覚が、他の業界よりも通用しにくいからです。
エンジニアというのは、常に技術が進化する世界で生きている職種です。自ら学び、自ら試し、自ら問題を解決できる姿勢がなければ、入社後に即座に壁にぶつかります。
その「姿勢」を、採用担当は就活のプロセスの中で見ています。つまり、就活の時点ですでに「学び続けられる人かどうか」が問われているのです。
「IT人材不足だから採用される」という誤解
「IT業界は人手不足だから、未経験でも採用される」という話を耳にすることがあります。

これは半分正しくて、半分は誤解です。
確かに、IT人材の需要は高まっています。経済産業省の試算によれば、2030年には約45万人のIT人材が不足するとも言われています。
しかし、不足しているのは「即戦力のITエンジニア」や「高度なスキルを持つ専門家」です。「とりあえずIT企業に入りたい」という動機だけで動いている人を、企業が放っておいて採用するほど、状況は甘くありません。
特に新卒採用の場合、企業はポテンシャルを重視しますが、それは「ゼロから育てる覚悟はある、しかしその素材が光っていること」が前提です。
「ITが流行っているから」「稼げそうだから」という理由だけでは、その”素材の輝き”を見せることができません。
未経験エンジニア就活の「本当の壁」
壁①:技術的な下地がないと面接で詰まる

IT企業の面接では、必ずと言っていいほど技術的な質問が来ます。
「プログラミング経験はありますか?」 「どんな言語を勉強しましたか?」 「何か自分で作ったものはありますか?」 「IT業界の動向で最近気になることを教えてください」
これらの質問に対して、具体的に答えられなければ、面接はほぼ終わります。
「入社してから勉強します」「これから取り組みます」は、残念ながら熱意のアピールにはなりません。採用担当から見ると、「今この瞬間、行動できていない人」というレッテルになってしまいます。
エンジニア志望の就活生に求められる最低限の準備として、次のことが挙げられます。
- プログラミング言語を1つでも触れている(PythonやJavaScriptなど)
- 自分で何かを作った経験がある(どんな小さなものでもOK)
- IT業界のニュースをある程度追っている(AIの動向、クラウドの普及など)

これらをすべてゼロから始める場合、最低でも3〜6ヶ月の継続的な学習が必要です。「就活シーズンが来てから始めよう」では遅いのです。
壁②:競合する学生は「IT経験者」が多い
あなたが未経験で挑む一方、情報系学部の学生や、すでにプログラミングの経験がある学生たちも同じ求人に応募しています。

IT企業の採用担当としての本音を言えば、「同じポテンシャルなら、すでに技術的な素養がある学生を優先してしまう」という現実があります。
もちろん、「文系・未経験」の学生が採用されるケースもあります。ただしそれは、技術以外の部分(論理的思考力、コミュニケーション能力、主体性、成長への意欲)が非常に高く評価された場合です。
未経験であることを言い訳にはできません。むしろ、未経験であることを上回る何かを、自分自身で作り上げなければなりません。
壁③:「なんとなくエンジニア」は入社後に痛い目を見る

採用に関わる仕事をしていると、入社後に深刻な悩みを抱えた新入社員から相談を受けることがあります。
その多くが、こんな状態です。
「思っていたのと違った。コードを書くのがこんなに大変だとは思わなかった」
「周囲のスピードについていけない。毎晩勉強しているのに追いつかない」
「仕事が楽しいと思えない。自分はエンジニアに向いていないのかもしれない」
これらの悩みの根っこには、就活の時点での「覚悟の甘さ」があることが多いです。
エンジニアという仕事は、常に学び続けることが求められます。新しい技術が次々と登場し、昨日の正解が今日の正解ではなくなる世界です。それでも「面白い!もっと知りたい!」と思える人だけが、長く活躍できます。
「安定していそう」「給料が良さそう」という動機だけでは、この世界で生き残ることは難しいのです。
それでも未経験からエンジニアを目指す君へ
厳しいことを書いてきましたが、正しい準備と覚悟を持って動いている学生には、必ずチャンスがあります。

私が採用担当として、思わず「この子を採りたい」と思った未経験学生たちには、共通点がありました。
次のセクションから、その「共通点」と「具体的にやるべきこと」を詳しく解説していきます。
採用担当が「この未経験学生は違う」と感じた共通点
共通点①:「なぜエンジニアか」が明確で具体的

動機の解像度が圧倒的に高い学生は、面接で光ります。
「ITが好きだから」「エンジニアはかっこいいから」ではなく、
「Webサービスを自分で作りたくてHTMLとCSSを独学し、実際に自分のブログを立ち上げました。サイトが動いた瞬間の感動が忘れられず、もっと本格的に開発を学びたいと思うようになりました」
という語りができる学生は、採用担当の印象に強く残ります。
「体験から来た動機」には、説得力があります。
頭で考えた動機ではなく、実際に手を動かした経験から生まれた動機は、面接官には一目でわかります。

だからこそ、まず動くことが大切です。プログラミングを少しでも触ってみて、その感触を言語化する。これだけで、面接の質が劇的に変わります。
共通点②:失敗や壁を乗り越えた具体的なエピソードがある

「プログラミングを勉強していてエラーが出て、2日間悩んで解決できた」という体験を、生き生きと語れる学生がいます。

採用担当として、このような話を聞くと「この人はエンジニアに向いている」と感じます。
なぜなら、エンジニアの仕事の大半は「エラーとの戦い」だからです。
バグを潰し、設計を見直し、うまくいかない原因を探り続ける——そのプロセスを楽しめる人、または苦しくても諦めずに向き合える人が、エンジニアとして成長していきます。
就活の段階でそのエピソードを持っていることは、大きな武器になります。

失敗してもいい。むしろ失敗してください。その失敗をどう乗り越えたかが、あなたのストーリーになります。
共通点③:IT業界・職種への理解が具体的

「エンジニアになりたい」とは言っても、エンジニアの種類は非常に多いです。
- Webエンジニア(フロントエンド・バックエンド)
- インフラエンジニア
- アプリエンジニア(iOS/Android)
- データエンジニア・データサイエンティスト
- AIエンジニア・機械学習エンジニア
- SIer系のシステムエンジニア(SE)
- SES(客先常駐)のエンジニア ……
「どんなエンジニアになりたいか」をある程度言語化できている学生は、面接で非常に印象が良いです。
「自分はWebサービスの開発に携わりたいので、まずはバックエンドを学んでいます」

こんなふうに話せると、採用担当は「ちゃんと業界を調べている」「目的意識がある」と評価します。
職種を絞ることで、学習の方向性も定まります。まず業界研究から始めましょう。
共通点④:継続的に学習している証拠がある


「3ヶ月間、毎日1〜2時間プログラミングを勉強しています」と話せる学生は、信頼感があります。
さらに「GitHubにコードを上げています」「Qiitaに学習記録を書いています」といったアウトプットの習慣がある学生は、採用担当からの評価が大きく上がります。
なぜか?
継続は、その人の意志の強さと自己管理能力を証明するからです。
面接でどんなに熱く語っても、証拠がなければ信憑性は下がります。逆に、学習の記録が残っていれば、言葉に重みが出ます。
GitHubのアカウントを作り、毎日少しずつコードをコミットする。Twitterで学習記録を発信する。ブログに勉強の記録を書く。
これらは、採用担当へのアピールであると同時に、自分自身の学習を強化する仕組みにもなります。
具体的に何をすればいいのか|未経験エンジニア就活のロードマップ
ステップ1:まず「エンジニアの仕事」を体験する(〜1ヶ月)

いきなり難しいことを学ぼうとすると、挫折します。
最初の1ヶ月は、「エンジニアの仕事ってこういうものか」を肌で感じることを目的にしてください。
おすすめの最初のアクション:
- Progate(https://prog-8.com)でHTMLとCSSを触る
- paizaラーニングでPythonやJavaScriptの入門コースをやってみる
- YouTubeでプログラミング入門動画を見る(「Python入門」「JavaScript入門」などで検索)
最初はコードの意味がよくわからなくて当然です。「なんとなく動かせた!」という感覚を積み重ねることが大切です。
この段階のゴール:「プログラミングは無理だ」か「もっとやりたい!」かを判断すること

もし「もっとやりたい!」と感じたなら、エンジニアとしての素養がある可能性が高いです。続けてください!
ステップ2:1つの言語に集中して学ぶ(2〜4ヶ月)

「いろんな言語を少しずつ」では力がつきません。1つの言語を、ある程度使えるレベルまで深めることが重要です。
未経験者におすすめの言語:
| 言語 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| Python | 文法がシンプル、AIやデータ分析でも使う | 論理的思考が好きな人 |
| JavaScript | Web開発の必須言語、動くものが作りやすい | デザインやUXに興味がある人 |
| Java | 企業システムで多く使われる、SIerを目指すなら | 大手・安定志向の人 |
| PHP | Webサービス開発で広く使われる | Web系スタートアップを目指す人 |
この段階のゴール:簡単なプログラムを自力で書けるようになること
例えば、「ToDoリストを作る」「天気予報APIを使って情報を取得する」「家計簿アプリの基本機能を作る」——こういった小さなものを作れると、面接でのアピール材料になります。
ステップ3:自分の作品(ポートフォリオ)を作る(3〜5ヶ月目)

採用担当として、これが最も重要だと考えています。
「作ったもの」があるかどうかで、採用の確率が大きく変わります。
ポートフォリオとは、自分が作ったアプリやWebサービスのことです。就活では、これを面接で見せたり、GitHubのURLを履歴書に記載したりします。
ポートフォリオのポイント:
- 完璧でなくていい:シンプルな機能でいいので、動くものを作ること
- 「なぜ作ったか」が説明できる:自分の課題解決や興味から生まれたものが理想
- GitHubで公開する:コードが見られる状態にしておく
- README.md を書く:何を作ったか、どう動かすかを説明する文書を書く
例えば、「自分の趣味に関連した情報をまとめるWebアプリ」「友人が使える簡単な予定管理ツール」など、身近な課題を解決するものから始めると、「なぜ作ったか」の動機が語りやすくなります。
ステップ4:業界・企業研究を深める(就活本番の3〜4ヶ月前から)

技術の勉強と並行して、業界・企業研究も同時進行で進める必要があります。
IT業界には、大きく分けていくつかの業態があります。
IT企業の主な業態:
- 自社開発系:自社のサービスやプロダクトを開発・運営する会社(例:メルカリ、サイバーエージェント、DeNA)
- 受託開発系:クライアント企業から依頼を受けてシステムを開発する会社
- SIer(システムインテグレーター):大規模なシステム開発・運用を担う企業(富士通、NTTデータなど)
- SES(システムエンジニアリングサービス):エンジニアを客先に派遣する業態
それぞれにメリット・デメリットがあります。
例えば自社開発系は技術的に最先端を学べる可能性が高い一方、求めるスキルレベルが高いことが多いです。SIerは大規模プロジェクトに関われる安定感がある一方、技術の変化に保守的な場合もあります。
自分がどのような環境でどのように成長したいか、をイメージしながら業態を選ぶことが重要です。
就活で必ず聞かれる質問とその答え方
「なぜITエンジニアを志望するのですか?」

この質問は、ほぼ100%聞かれます。そして、多くの学生がこの答えを浅くしてしまっています。
NGな回答例:
これらは「本当の理由」に見えますが、採用担当には「調べた言葉を並べているだけ」と映ります。
OKな回答例: 「大学の授業でPythonを少し触る機会があり、自分でデータを分析して可視化できたことに強い達成感を感じました。その後、独学でWebスクレイピングを学び、自分で作ったツールで就活情報を集めるスクリプトを作りました。コードが思い通りに動いたとき、課題を自分の手で解決できる喜びを感じ、この感覚をプロとして追求したいと思いエンジニアを志望しています」
「体験 → 感情 → 志望」という流れで語ると、説得力が増します。
「未経験ですが、どのように成長しようと考えていますか?」
この質問には、具体的な学習計画と、学習の姿勢を合わせて答えることが重要です。
OKな回答例: 「現在はJavaScriptを中心に学習しており、ToDoアプリを作成しています。入社後は業務で使われる技術スタックをできるだけ早くキャッチアップするため、業務外でも学習を続けるつもりです。また、社内の先輩エンジニアに積極的に質問し、コードレビューを通じて早期に戦力になれるよう取り組みたいと思っています」
「今やっていること」と「入社後にやること」を両方語れると、信頼感が出ます。
「プログラミング以外のアピールポイントはありますか?」
エンジニアは技術だけではありません。コミュニケーション能力、論理的思考力、チームワーク、粘り強さなども非常に重要です。

サークル活動、アルバイト、学業での経験を、「エンジニアとしての素養」に結びつけて語れると効果的です。
例えば、飲食店のアルバイトで「クレームに対処した経験」を話す場合、 「問題の原因を特定し、改善策を提案・実行した」という流れで語ると、エンジニアが日々やっているデバッグ・改善サイクルに重なります。
どんな経験も、「課題を発見し、解決策を考え、実行した」というフレームで語ることで、エンジニア適性のアピールにつながります。
エントリーシート(ES)で差をつけるポイント
ESで最も重要な「志望動機」の書き方

エンジニア職のESで、最も読まれるのは志望動機です。ここで採用担当の目を引けるかどうかが、書類選考の通過率に直結します。
採用担当として、印象に残るESの共通点:
逆に、NG なESの共通点:
「なぜこの会社なのか」は、必ず企業のWebサイト・IR情報・採用ページを読み込んで、具体的な根拠を書いてください。
「御社の事業に魅力を感じました」では不十分です。「御社の〇〇というサービスの△△という機能が、ユーザーの××という課題を解決している点に共感しました」くらいの深さが必要です。
IT業界に入ってから後悔しないために|入社前に知っておくべき現実
現実①:最初の1〜2年は「下積み」期間

IT企業に入社したばかりのエンジニアは、最初からバリバリとコードを書くわけではありません。多くの企業では、入社後まず研修期間があります。この期間は、会社のルール・文化・基礎技術を学ぶことが中心です。
その後の配属先では、最初は先輩のサポート役や、テストコードの作成、ドキュメント整理などから始まることが多いです。
「もっと大きな仕事がしたい」と思っても、最初は地道な作業が続きます。これは、エンジニアに限らずどの職種でも同じですが、特にIT業界では「基礎がしっかりしていない人にいきなり大きな仕事を任せない」という文化が強いです。
なぜなら、コードのバグが実際のサービスに影響するリスクがあるからです。「責任ある仕事を任せてもらう」ためには、信頼を積み上げる時間が必要です。
最初の1〜2年は「学ぶ期間」と割り切れる人が、長期的に活躍できます。
現実②:継続的な自己学習は必須

エンジニアの世界では、「去年覚えた技術が今年はもう古くなっている」ということが珍しくありません。
AIの台頭、クラウド技術の進化、フレームワークの移り変わり——技術のトレンドは常に変化しています。これは言い換えると、エンジニアとして働く限り、学習を止めたら置いていかれるということです。
多くのエンジニアが、業務時間外にも自主学習をしています。Udemy(オンライン学習サービス)で新しい技術を学んだり、GitHubで他人のコードを読んだり、技術書を読んだり。
就活の段階で「学ぶことが好きか」「学び続けられるか」を自問自答してみてください。
もし「学ぶのは義務だからしたくない」「仕事が終わったら勉強したくない」という気持ちが強いなら、エンジニアとしての長期的なキャリアは厳しいかもしれません。
逆に、「新しいことを知るのが楽しい」「わからないことが解けた瞬間が好き」という感覚がある人は、エンジニアの素養があります。
現実③:チームで働くスキルが意外と重要

「エンジニアは1人でパソコンに向かって作業する」というイメージを持っている人も多いかもしれません。
しかし実際には、エンジニアの仕事はチームで進めることがほとんどです。
毎朝のスタンドアップミーティング(進捗共有)、設計レビュー、コードレビュー、クライアントや他部署とのコミュニケーション——1日の仕事の中で、人と話す時間は思っているよりずっと多いです。
また、「自分のコードが他のメンバーに読まれる」ことが前提の世界です。わかりやすいコードを書く、適切なコメントを残す、設計の意図をドキュメントで共有する——これらはすべて、チームのためのコミュニケーション能力です。
就活でよく問われる「コミュニケーション能力」は、エンジニアの世界でも非常に重要です。
「技術さえあれば人付き合いは苦手でもいい」という考えは、少し改める必要があるかもしれません。
現実④:給与と待遇は会社・業態によって大きく異なる

「ITエンジニアは給料が高い」というイメージがありますが、これは会社によって大きく差があるのが現実です。
例えば、Web系スタートアップや大手IT企業ではエンジニアの給与が高い傾向がありますが、SES企業やSIerでは、特に若手のうちは必ずしも高給とは言えないケースもあります。
また、残業時間やリモートワークの可否も、会社によって大きく異なります。
就活では給与だけでなく、「どのような技術環境で働けるか」「どんなキャリアパスがあるか」「研修制度は整っているか」なども重要な選択軸です。
「どんな会社を選ぶか」が、入社後の成長スピードと満足度に大きく影響します。
採用担当として「やめてほしい」と感じる就活行動
NG行動①:複数社に同じESを使い回す

「志望動機」の欄に、企業名だけ変えて同じ文章を使い回しているESは、採用担当にはすぐにわかります。
業界研究や企業研究が浅いES、「〇〇という点に魅力を感じた」という記述がどの企業にも通用するような曖昧な内容——これらは、採用担当に「うちの会社に本当に興味があるのか?」という疑問を持たせます。
ESは1社1社、その会社のことを調べて書いてください。
時間はかかりますが、その手間が選考通過率を上げます。
NG行動②:面接でエンジニアへの熱意だけを語る
「エンジニアになりたいという気持ちはどの誰にも負けません!」
この言葉だけでは、採用担当には響きません。
熱意は行動でしか証明できません。
熱意があるなら、なぜプログラミングを勉強していないのか。熱意があるなら、なぜ作ったものがないのか。熱意があるなら、なぜIT業界のニュースを追っていないのか。

採用担当は、言葉ではなく行動を見ています。「語る」よりも「示す」ことを優先してください。
NG行動③:志望する職種を絞らずに就活する
「IT業界に入りたい」という言い方は、「食品業界に入りたい」と言っているのと同じです。業種の話であって、職種の話ではありません。
IT企業の中にも、エンジニア・デザイナー・ディレクター・営業・マーケターなど、さまざまな職種があります。「エンジニアになりたい」と言っても、どのエンジニアになりたいのかが曖昧では、採用担当には「業界への理解が浅い」と映ります。
まずは「どのエンジニアになりたいか」を決める。それが業界研究の出発点です。
NG行動④:OB・OG訪問をしない

IT業界を志望する学生の中には、OB・OG訪問を「面倒くさい」と感じてスキップしてしまう人がいます。
しかし、OB・OG訪問は非常に有益です。実際に働いている人の声から、会社の雰囲気・技術環境・成長機会・残業実態など、公式情報では得られないリアルな情報を得られます。
また、OB・OG訪問でつながったご縁が、その後の選考に有利に働くこともあります(選考に直結する場合は企業によって異なりますが、「志望度の高さ」のアピールになることは確かです)。
IT企業でも、OB・OG訪問を積極的に行うことを強くおすすめします。
IT企業を選ぶときに確認すべき10のチェックリスト

採用担当として、学生の皆さんに「こういう基準で会社を選んでほしい」と思うポイントをまとめました。企業を比較するときの参考にしてください。
チェック①:入社後の研修・教育制度が整っているか
未経験で入社する場合、どれだけ丁寧に育ててもらえるかは非常に重要です。
- 入社後の研修期間はどのくらいか
- メンター制度(先輩がついてくれる制度)はあるか
- 社内勉強会や技術共有の文化があるか
OB・OG訪問や面接で、これらを確認してみてください。
チェック②:どんな技術スタックを使っているか
使っている技術の方向性が、自分が学びたい技術と合っているかを確認しましょう。
例えば、「Pythonでデータ分析・AI開発をやりたい」と思っているのに、その会社の主な技術がCOBOL(古い言語)だったら、希望とは異なる環境で働くことになります。
企業の採用ページや、エンジニアブログ(技術ブログを公開している企業が増えています)を読むと、技術スタックがわかることがあります。
チェック③:エンジニアのキャリアパスが明確か
5年後・10年後にどのようなエンジニアになれるかのイメージを持てる会社を選ぶことが重要です。
「入社後3年でリードエンジニアになる人が多い」「マネジメントか技術専門家かでキャリアを選べる」——こういった情報があると、将来のイメージが持てます。
チェック④:エンジニアの離職率・定着率はどうか
離職率が高い会社には、何らかの理由があります。
直接「離職率はどのくらいですか?」と聞くのは難しいかもしれませんが、社員の平均勤続年数や、LinkedInなどのSNSで元社員のコメントを調べる方法があります。
また、口コミサイト(OpenWork、Glassdoorなど)でのリアルな評価も参考になります。
チェック⑤:リモートワーク・働き方の柔軟性はあるか
自分のライフスタイルに合った働き方ができるかも、長く働くうえで重要な要素です。
フルリモート・ハイブリッド・完全出社など、企業によって方針が異なります。強制ではありませんが、自分が長く健康的に働ける環境かどうかを考えておきましょう。
チェック⑥:技術負債(古い技術)だらけではないか
一部の企業では、10〜20年前に作られたシステムを今も運用・保守していることがあります。
そのような環境では、新しい技術を学ぶ機会が少なく、エンジニアとしての成長が鈍化するリスクがあります。
「レガシーなシステムしかない」「新しい技術の導入が進んでいない」という環境は、特に未経験から入る場合には慎重に見極める必要があります。
チェック⑦:社員のアウトプット(技術ブログ・登壇)があるか
エンジニアが技術ブログを書いていたり、勉強会・カンファレンスで発表していたりする会社は、技術的に活発な文化があることが多いです。
企業名で「技術ブログ」「エンジニアブログ」と検索してみてください。記事の更新頻度や内容のレベルで、その会社の技術力・文化がある程度わかります。
チェック⑧:社長・CTO・エンジニアのSNSが発信的か
会社のトップや技術責任者がSNSで積極的に発信している会社は、外部への情報開示に積極的な傾向があります。
特にCTO(最高技術責任者)がエンジニアコミュニティに関わっているような会社は、技術への投資意欲が高いことが多いです。
チェック⑨:選考プロセスに技術試験・コーディングテストがあるか
選考に技術的な試験が含まれている会社は、エンジニアの採用を真剣に考えていると言えます。
逆に、技術試験が一切なく面接だけで採用が決まる会社は、「とりあえず人を集めたい」という姿勢の場合もあります。
もちろん、未経験を積極採用するために試験をあえて設けていない会社もあります。一概には言えませんが、選考プロセスからもその会社の採用に対する姿勢が見えてきます。
チェック⑩:内定後のフォロー(内定者研修・懇親会など)があるか
内定後のフォロー体制がしっかりしている会社は、入社後のサポートも手厚い傾向があります。
内定者向けの勉強会・研修・懇親会などを提供している会社は、入社前から「育てる気持ち」があると言えます。
「やっぱりエンジニアじゃないかも」と感じたときに考えること

ここまで読んで、「自分にはエンジニアは向いていないかも」と感じた人もいるかもしれません。
それは、正直な気づきです。エンジニア以外にも、IT企業には多くの職種があります。
IT企業で働く、エンジニア以外の職種
Webディレクター・プロジェクトマネージャー(PM)
エンジニアとデザイナー、クライアントの間に立って、プロジェクト全体をまとめる仕事です。コミュニケーション力・調整力・スケジュール管理能力が重要で、技術的な知識は「ある程度あればOK」なことが多いです。

「人と話すのが好き」「物事を整理するのが得意」という人に向いています。
ITコンサルタント
クライアント企業のビジネス課題をITで解決する方法を提案する仕事です。エンジニアよりも「ビジネス理解」「課題発見力」「提案力」が問われます。
マーケター・データアナリスト
Webマーケティングやデータ分析を通じて、サービスの成長に貢献する仕事です。GoogleアナリティクスやSQLを使ったデータ活用が求められることが多く、分析・論理思考が好きな人に向いています。
カスタマーサクセス
ユーザーがサービスをうまく使えるよう支援する仕事です。近年、SaaS(クラウドサービス)企業で特に需要が高まっています。「人の役に立つことが好き」「コミュニケーションが得意」な人向けです。
「エンジニアになれなかった=IT業界に入れない」ではありません。IT業界に関わる方法は、エンジニア以外にもたくさんあります。
就活を進める上での「心の準備」
落ちることは当たり前、と知っておく
就活では、多くの会社から不採用通知が来ます。これは、誰でも経験することです。しかし、不採用は「あなたに価値がない」という意味ではありません。
会社とのマッチングの問題、タイミングの問題、たまたまその年の採用枠の問題——不採用にはさまざまな理由があります。
大切なのは、落ちた経験から学び、次に活かすことです。
「なぜ落ちたのか」を振り返り、ESの書き方を改善する、面接の答え方を見直す、学習の姿勢を強化する——このプロセスを繰り返すことが、最終的な内定につながります。
比較しない、自分のペースで進む
SNSを見ていると、「〇〇から内定もらった!」「外資系ITに決まった!」という投稿が目に入ることがあります。
他人の就活と自分の就活を比較しても、何も得られません。

あなたにはあなたの強みがあり、あなたに合った会社が必ずあります。
他人の就活ニュースに一喜一憂するよりも、自分の学習・準備・企業研究に集中してください。
「就活のためだけ」の勉強は続かない
プログラミングを「就活に受かるために仕方なくやっている」という感覚でいる人は、入社後に苦しみます。
「面白いからやっている」「作りたいものがあるからやっている」という感覚が、長続きの秘訣です。
もし今、プログラミングが「義務感でしかない」という状態なら、少し立ち止まって考えてほしいです。自分が本当にエンジニアという仕事をしたいのか。それとも別の形でIT業界に関わりたいのか。

その問いに正直に向き合うことが、後悔のない就活・キャリア選択につながります。
まとめ|未経験からエンジニアになるための「本当の覚悟」

この記事では、甘い言葉を使わず、現役採用担当者の視点からIT未経験学生の就活のリアルをお伝えしました。
改めて、重要なポイントをまとめます。
未経験エンジニア就活で押さえるべきこと
覚悟の面:
- エンジニアは「常に学び続ける職種」であること
- 入社後も学習を止めたら置いていかれること
- 最初の1〜2年は地道な下積みがあること
準備の面:
- 就活前から技術学習を始めること(最低3〜6ヶ月)
- 作ったものを1つでも用意すること(ポートフォリオ)
- 学習の証拠(GitHubなど)を作っておくこと
- 志望する職種(どのエンジニアか)を明確にしておくこと
就活行動の面:
- ES・面接で「体験から来た動機」を語ること
- 企業研究を深め、「なぜこの会社か」を語れるようにすること
- OB・OG訪問を積極的に行うこと
- 学び続けられることを行動で示すこと

「未経験からエンジニアになる道は、決して簡単ではない」——この記事の冒頭で、そう書きました。
でも最後にこうも言いたい。
正しい準備と本物の覚悟を持って動いているなら、その道は必ず開けます。
採用担当として、毎年「この人は本物だ」と思わせてくれる未経験学生に出会います。共通しているのは、華やかなスキルでも高いGPAでもなく、「本気で動いてきた痕跡」です。
その痕跡が、採用担当の心を動かします。

あなたの本気が、採用担当に伝わることを願っています。
よくある質問(FAQ)
Q. プログラミング未経験でも、就活で間に合いますか?
A. 大学3年の春〜夏から本気で動けば、間に合う可能性はあります。
ただし、「間に合う」とは「準備できた状態で就活本番を迎えられる」ということです。プログラミングを3〜6ヶ月学習し、何か作ったものがあれば、多くのIT企業の選考に臨める状態になれます。
逆に「就活直前の3月から始める」では、学習量が圧倒的に不足します。今日からスタートしてください。
Q. プログラミングスクールには通うべきですか?
A. 通う必要は必ずしもありませんが、「自走できない人」には有効です。
独学でも、Progateやpaizaラーニングなど無料・低価格の学習リソースは豊富にあります。ただし、独学では途中で挫折しやすいのも事実です。
プログラミングスクールは、「強制的に学習できる環境が必要な人」「カリキュラムに沿って体系的に学びたい人」には有効です。ただし、費用は30〜80万円程度かかるものが多いため、「本当に自分に必要か」をよく考えてから検討してください。
Q. 文系出身でもエンジニアになれますか?
A. なれます。ただし、理系出身者と同じ土俵で戦うことを意識した準備が必要です。
文系出身のエンジニアは多くいます。重要なのは、出身学部ではなく「どれだけ本気で準備してきたか」です。
文系の強みは、コミュニケーション能力・語学力・論理的な文章作成能力などです。これらを技術力と組み合わせることで、独自の強みになります。
Q. どの会社の規模を狙うべきですか?大企業か、スタートアップか?
A. どちらにもメリット・デメリットがあり、自分の目指す方向性によります。
大企業(大手SIer・大手IT企業)は、研修制度が充実しており安定感がある反面、配属先が希望通りにならない可能性もあります。
スタートアップは、早い段階から大きな仕事を任せてもらえる可能性がある反面、教育環境が整っていない場合もあります。
自分が「安定した環境でじっくり成長したいか」「裁量を持って速く動きたいか」によって、選ぶべき規模感は変わります。
Q. IT企業の面接では、技術的な問題が出ますか?
A. 企業によって異なります。
技術試験(コーディングテスト)を設けている企業もあれば、技術的な問いを口頭で聞く企業、まったく技術試験がない企業もあります。
いずれにせよ、「プログラミングを学んでいる」「作ったものがある」という状態でいることが、最大の備えです。






